宣 銅烈 (Dong Yol Sun)
 1963年、韓国光州生まれ。投手。右投右打。背番号20(中日)。「韓国の至宝」と呼ばれた韓国史上最高の投手。光州一高で全国制覇。高麗大時代に世界青少年野球選手権で韓国を優勝に導く。
 1982年には世界アマチュア野球選手権で優勝し、最優秀選手に選ばれる。
 ロス五輪にも出場し、1985年にドラフト1位で韓国プロ野球のヘテに入団。
 1年目は、シーズン後半から出場し、7勝4敗8セーブという成績ながら、防御率1.70で最優秀防御率のタイトルを獲得。その後、7年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得。1986・1989〜1991に最多勝。93年からは本格的にリリーフに転向し、31セーブでセーブ王と0.78で最優秀防御率。95年にも33セーブ、防御率0.45でセーブ王となる。
 1996年、33歳にしてついに日本のプロ野球に移籍を決意し、中日ドラゴンズに入団。
 1年目は、日本への適応に苦しみ、5勝1敗3セーブという記録にとどまる。
 しかし、2年目には実力を発揮し、1勝1敗38セーブ、防御率1.28でセーブ王を獲得。
 1999年、28セーブを挙げて胴上げ投手となり、優勝に大きく貢献したにも関わらず、36歳の若さで余力を残して引退。
 球を放すのが遅く、位置が低いため、宣の球は投げ下ろしているにも関わらず、下から上に伸びていくように見えた。全盛期には160キロ出ていたという直球と140キロを軽く超える高速スライダーを武器として、韓国でも日本でも投球回数以上の奪三振を稼いでいる。
 韓国プロ野球での成績(11年間)
   146勝40敗132S。防御率1.20。最多勝4回、セーブ王2回。最優秀防御率8回。
 日本プロ野球での成績(4年間) 
   10勝2敗98S、108SP。防御率2.70。セーブ王1回(1997)。
 全プロ野球生活での合計
   156勝42敗230S・防御率1.36。

数々の伝説

 @規則を変えさせる

 宣は、韓国プロ野球のヘテに指名されるが、契約金が折り合わず決裂。宣は、実業団野球の韓国化粧品に入る。
 しかし、地元光州のファンと母の熱望により、すぐにヘテ入りを決意する。
 ところが、「実業団入りした選手は2年間プロに入れない」という規定があったため、2年間プロ入りが遅れることになりかねなかった。
 そこで、宣の飛び抜けた才能と国民の期待を考慮して、プロ野球の韓国野球委員会(KBO)はヘテ入りを認めた。しかし、逆にアマの大韓野球協会は規則にのっとり、プロ出場停止を申請。
 結果的に双方の折衷案でシーズン後半戦から出場可能となった。


 A防御率0.49

 来日する前年、宣は、33セーブでセーブ王となっているが、その年の防御率が0.49である。109イニング投げての記録で、普通の1試合9イニングで換算すると、12試合投げて6試合で完封、6試合で1失点完投した計算になる。


 B中日移籍の賛否をめぐってヘテが世論調査

 韓国で数々のタイトルを獲得して「至宝」とまで呼ばれた宣も、さらに上のレベルでの野球を求めて日本プロ野球への移籍を決意する。
 しかし、困ったのはヘテである。宣は、韓国史上最高の投手であり、チームの看板であると同時に韓国の英雄である。ファンの反発も予想できた。そこで、ヘテは、宣の中日移籍の賛否を問う世論調査を行うことにした。
 世論調査で、韓国のファンは、宣の中日移籍を後押しした。移籍賛成が8割を占めたのだ。この結果を受けて、ようやくヘテは、宣の中日移籍を許可したのである。


 C堅実な人柄
 
 宣は、来日1年目、韓国と同じようにスロースタートの調整法で失敗し、不振となる。
 しかし、そこで終わってしまう他の外国人とは違い、宣は、中継ぎとして投げながら、日本式を取り入れていく。このときの経験と中継ぎ投手の苦労を知ったことが翌年から役に立ったと本人は振り返っている。
 そして、2年目は、最初から日本式に従って調整し、見事に復活。
 宣は、スーパースターでありながら、派手なことやわがままなことはせず、堅実な態度は韓国でも日本でも国民や周囲の人々に好かれていた。彼が野球を通じて日韓の間を近くした功績は大きなものがある。


 D1年間被本塁打ゼロ

 1997年、来日2年目で復活した宣は、38セーブを挙げてセーブ王に輝く。この年、防御率1.20という記録もさることながら、232人の打者と対戦して1人にも本塁打を浴びていない。
 地味ながら、これは、快記録である。
 韓国でも被本塁打は少なく、1990年には190イニング投げて、被本塁打はわずかに1本である。


 E韓国と日本の両方で100セーブポイント以上

 宣は、韓国で132セーブ、日本で98セーブを記録している。日韓両国で100セーブずつという記録は惜しくも達成されなかったが、日本でのセーブポイントは100を超えた。宣は、100セーブポイントを日韓両国で達成した最初の投手となった。



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