試合消化に足並みの揃えを
〜試合のない日に優勝決定した中日〜


犬山 翔太
 
 1.1日遅れの胴上げ

 10月1日、中日は、阪神が試合に敗れたことでセリーグの優勝を決めた。その日、試合のなかった中日は、胴上げをせず、ビールかけのみを行った。
 そして、翌10月2日の試合後、中日は、落合監督の胴上げを1日遅れで行ったのである。私がこれまで見てきた中で1日遅れでの胴上げは初めてだった。

 確かに2010年のセリーグは、近年まれにみる混戦となって優勝争いは最後まで続いた。
 春先は、首位を独走してそのままリーグ優勝するかと思われた巨人が失速し、続いて首位に立った阪神もまた抜け出せなかった。そんな中で、地道に接戦をものにしてきた中日が9月10日に首位に立つとそのまま逃げ切ったのである。
 それでも、最終的に中日と2位阪神との差が1ゲーム、3位には2位とゲーム差なしで巨人が続いたことから分かるように、僅差の優勝だった。

 にもかかわらず、優勝の決定は、中日の試合のない日であり、あまりにも虚しい優勝決定となった。この決まり方は、予期しなかったものではあるとはいえ、ファンのためを思えば、可能な限り避けてほしかったというのが本音である。
 来年以降も、こういった優勝決定になると、プロ野球人気の根幹を揺る出しかねないだけに、改善策を探るべきである。


 2.日程を早く消化した中日と消化が遅れた阪神

 実際、2010年の中日は、予想以上に試合を順調に試合をこなしていった。9月26日のヤクルト戦を終えた時点ですでに143試合を消化し、残すは10月2日のヤクルト戦のみとなっていた。
 その一方では、2位の阪神は、9月26日時点でまだ9試合を残していた。
 このとき、首位中日と2位阪神のゲーム差は2。そして、驚くべきことに阪神にマジック8が点灯したのである。
 残り1試合の中日が10月2日に勝利したとしても、阪神が残り9試合を8勝1敗でいけば、中日に1ゲーム差をつけて優勝できる。そんな楽観的な計算が生み出すからくりだった。
 いくら下位チームが来季に向けて若手中心に切り替えてくるとはいえ、残り9試合を8勝1敗でいくことは不可能に近い。特にそのうちの2戦が同じく優勝を争う巨人だけに、阪神の優勝は、風前の灯だった。

 事実、阪神は、9月28日の巨人戦に5−7で敗れると、9月30日の横浜戦では抑えの藤川球児が3−1とリードした9回表に横浜の主砲村田修一に逆転3ラン本塁打を浴びて極めて痛い敗戦を喫する。気落ちしたまま、10月1日の広島戦でも完封負けした阪神は、10月2日の中日×ヤクルト戦を待たずして優勝を逃す結果となったのである。
 こうして、中日は、急遽、10月1日にビールかけを行い、選手や監督がテレビ番組に出演するという事態になった。そして、胴上げは、観客の前でという方針の下、翌日の試合後にナゴヤドームで行うことが決まる。

 このような変則的な胴上げに至った最大の理由は、中日がナゴヤドームというドーム球場を本拠地にしているのに対し、阪神が甲子園という屋外球場を本拠地としているからである。
 ドーム球場は、めったなことがない限り、試合が中止になることはない。それにひきかえ、屋外球場は、雨天になれば中止せざるをえないため、中止になった試合がシーズン最終盤に振り替えとなる。
 そのため、中日や巨人は、9月下旬以降、ほとんど試合がなくても、阪神・ヤクルト・広島・横浜は試合が多く残るという現象が起きやすい。
 それを完全に防いで、6球団が必ず同じ日に試合を行う体制を作るには、全球場をドーム球場にするかに乏しいのである。


 3.ダブルヘッダーで足並みをそろえた消化を

 そうなってくると、日程の調整でやりくりをしていくしか、現在のところ、手だてがない。
 とはいっても、移動日に急遽試合を組み込むというのも、球場側の都合で困難が予想できるので、最善の手だてとしては、中止になったら翌日の試合、もしくは次の同球場での対戦でダブルヘッダーを組むことである。

 日本でもかつてはダブルヘッダーが数多く存在し、1980年代までは頻繁にダブルヘッダーを目にすることができた。近鉄が1988年に優勝を賭けてロッテと対戦した10.19も、ダブルヘッダーの試合だった。
 しかし、東京ドームができて以降、ダブルヘッダーは年々減少し、1999年以降、2010年までの12年間はダブルヘッダーが1試合もなかった。
 これにより、選手にとっては負担が軽くなったが、逆に2010年のように試合のない日に優勝が決まったり、首位と2位に大差がついた年は、消化試合が増えるといった弊害が生まれたのである。

 大リーグは、そうした弊害を避けるため、雨天中止になった場合は、翌日の試合や次の同球場の対戦において昼と夜のダブルヘッダーを組んでしのいでいる。また、大リーグでは、雨天であった場合にも、天候が回復する見込みがあるなら長時間試合開始を遅らせて、試合を強行することも多い。ダブルヘッダーを開催することで観客動員の現象や、選手たちへの負担増など、弊害も考えられるが、それを差し引いても、シーズン終盤にチーム間の残り試合数差が大きくなって優勝争いを白けさせるよりはメリットの方が大きい。

 日本でも、ファンを最優先に考えるのであれば、雨天中止となった試合は、なるべく早いうちに昼夜のダブルヘッダーを組んで試合をこなしていくべきである。
 同一リーグのチームが試合の消化に8試合も差ができてしまうような事態は、ファンの応援心理を低下させるだけである。ダブルヘッダーによる日程調整によって、プロ野球ファンがシーズン終盤の白熱した優勝争いを楽しめるように早急な改善が必要である。




(2011年1月作成)

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