2011年3月24日、セリーグも、パリーグと同様に開幕日を4月12日に延期することを決めた。選手会と世論の猛反発に加え、政府からの2度目の要請を受けて、さすがに巨人も従わざるを得なかった。
 とはいえ、関東・東北に本拠地を置く球団がどこまで関西の地方球場を使用して、国民に誠意を見せることができるかという大きな課題が残っている。特に東京ドームは、2011年の使用が困難な状況だけに、セリーグ内での調整力が問われている。

                                    2011/3/27 犬山

2011年のプロ野球はすべて西日本での試合にすべき
〜開幕問題で醜態をさらし続けるセリーグ〜


犬山 翔太
 
 1.巨人の3月25日東京ドーム開幕ナイター強行を国全体で阻止

 2011年3月11日に起きた東日本大震災。日本の歴史上最大となるマグニチュード9.0に加えて、高さ10メートルを超える津波が東日本沿岸部を襲い、震災から10日たっても被害の全容は全く見えていない。それどころか半倒壊の家屋から救助を待つ人が見つかり、救助活動も人数が足りていない状況である。行方不明者は、数え切れないほどいる。東北・関東地方では電気不足・燃料不足・食糧不足・水不足が深刻である。

 そんな大震災から、日本プロ野球界は、迷走を繰り広げることになる。
 震災前、プロ野球は、3月25日にセパ同時開幕することが決まっていた。
 だが、震災後、状況は一変する。即座に翌日のオープン戦は中止と決まった。その後、ゴルフやマラソンの大会も中止が相次ぎ、サッカーのJリーグは、3月末までの試合自粛を決める。
 そんな流れの中、3月17日にパリーグは、開幕を4月12日に延期することを発表する。被災地宮城に本拠地を置く楽天や千葉のロッテ、北海道の日本ハムなど、試合をできる状況にないからである。

 しかし、セリーグは、巨人が強硬に通常通りの3月25日開幕を主張したことで一旦は、延期を主張する他の5球団を押しのけて3月25日開幕が決まる。
 特に巨人の渡辺恒雄球団会長は、第二次世界大戦後3カ月で選手の要請によりプロ野球を再開した前例に基づき、開幕延期案を俗説だと貶めた。
  だが、渡辺氏の理論で行けば、震災後3カ月の6月開幕となり、さらに選手会 は試合の要請ではなく、開幕延期を主張している。もっと言えば、戦後3カ月の11月23日に行われた戦後初のプロ野球東西対抗戦は、午後1時11分開始で場内アナウンスもスコアボードもなく、一切電力を使用していなかった。もちろん、当時はナイターなどなかったから、その年も翌年も全試合デーゲームである。
 つまり、実際は渡辺案の方が俗説なのだが、セリーグは、いつも巨人主導である。巨人が白と言えば、たとえ黒であっても他の5球団は黙っているしかなかったのだ。

 しかし、さすがに日本最大の震災被害の最中だけに、世論も、選手会も、そして、文部科学省さえ黙っていなかった。
 特に文部科学省が通達という形で、電力使用と試合自粛を求めたことで、セリーグは、わずか4日間開幕を後ろにずらすという微量の改善策で乗り切ろうとしている。

 プロ野球が日本最大のスポーツであるがゆえに、国民全体を巻き込んだ論争にまで発展しているが、この問題は論点が多数あるうえに、誰もが初めての経験だけに、情報が入り乱れて錯綜している。
 果たして最善の方策は、いかなるものになるのか。


 2.文部科学省の指導が入る事態に

 3月18日に文部科学省がプロ野球に対して通知を出したことは、私にとっては衝撃だった。
 プロ野球機構や巨人上層部の暴走に対して、世論や選手会が激しい抗議をするのは、既に2004年の球界再編問題のときに経験済みである。だが、未だ行方不明者が多数いる状況で、予定通り東京でナイターを実施しようとするセリーグに対しては、国も見過ごすことはできなかったのだ。

 「東北地方太平洋沖地震に伴う協力のお願い」として文部科学副大臣
鈴木寛の名で発出したその通知は、本当に国が危機的な状況にあることを暗に示している。

1.厳しい電力需給事情を踏まえ、計画停電が行われている東京電力・東北電力管内以外の地域で試合を開催するよう、可能な限りの努力をお願いします。
2.特に、東京電力・東北電力管内の地域では、夜間に試合を開催することは厳に慎むようお願いします。
文部科学省 22文科ス第1060号
『東北地方太平洋沖地震に伴う協力の御願い』2011/3/18

 文部科学省が厳命したのは、2点である。
 @試合を東北と関東では開催しないように努力しなさい。
 A東北と関東ではナイターを開催してはならない。
 端的に言えばこうなるのだが、これに対してセリーグが3月19日に出した結論は下記となる。

1、セントラル・リーグの開幕は延期して、3月29日開催といたします。
2、開幕後4月3日までは、東京・東北電力管内のナイトゲームを取りやめ、デーゲームといたします。
3、4月5日から東京・東北電力管内のナイトゲームは「減灯ナイター」とし、大規模節電策を講じます。その他の球場においても節電対策を推進いたします。
4、節電策の一つとして、今季のレギュラーシーズンについて延長戦は行わず、9回で打ち切りといたします。
5、東京・東北電力管内では、夏場の試合開催にあたって、可能な限り、デーゲームとすることを検討いたします。
6、被災地対策、観客の皆様、選手、球場の安全確保や節電問題等に対処するため、震災対策会議を設置し、選手たちと連携してこの難局を乗り越えて参ります。
セントラル野球連盟 2011/3/19

 残念なことに、文部科学省が要請した1については、まったく努力の跡も見られない状況である。
 2については、セリーグ発表の5で「夏場の試合開催にあたって、可能な限り、デーゲーム」という極めて限定的な対応とした。実際は夏場までのナイター開催の方をとりやめるべきではあるのだが、考慮がなされていないのである。

 さらに残念なことに、延長戦は行わずに9回打ち切りを発表している。私としては、野球観戦していて最も楽しいのが、ホームチームの10回から12回までの裏の攻撃なのだが、セリーグの蛇足とも言えるルール変更は、プロ野球ファンの野球への情熱をそぐ結果となった。


 3.すべて西日本での試合に組み直すべき

 電力の節約において重要なのは、電力不足が起こっている東京電力・東北電力管内に限るということである。それ以外の管内からの送電は限られているため、節電するしかないのだ。
 逆にいえば、関西や九州では節電しなくても、住民に影響がない。つまり、節電を求められているのは、東京ドーム、西武ドーム、神宮球場、千葉マリンスタジアム、クリネックススタジアム宮城、横浜スタジアムとなる。

 この中で特に東京ドームは、照明だけでなく、空調に莫大な電気を要する。あれだけ広大な空間を温度調整し、換気も行うのだから、野外球場とは電気使用が比にならない。1日5万〜6万キロワット使用し、試合のない日に比較して最大4000世帯分の電力を1日で使用してしまう。
 西武ドームは、自然の風が通り抜ける半屋外ドームとなっているため、その分の空調費用がかからない。先見あるドームだったと言うべきだろう。

 プロ野球界は、これらの東北電力・東京電力管内の球場を使用せず、西静岡地方や愛知、岐阜、兵庫でプロ野球開催可能な地方球場を使用する、ナゴヤドームや京セラドーム、甲子園といった球場を半日借りてダブルヘッダーを組む、といった努力を国から求められている。
 だが、現状のところ、プロ野球球団の経営側としては、面倒な調整や損失を生むことも確実なため、足踏みが続く。国からの金銭的補償も、交渉が必要となってくる。

 これまで比較的平穏な日程運営を続けてきたプロ野球にとって、未曾有の被災に対する危機管理体制はなく、柔軟な対応がとれなくなってしまっている。
 最善の策は、巨人・西武・ヤクルト・ロッテ・楽天・横浜は、西静岡より西の球場を仮本拠地として、試合日程を調整すべきだろう。それが困難であれば屋外球場なら本拠地でデーゲームとするしかない。
 また、東北電力・東京電力管内以外では、ナイター開催自粛は求められていないし、必要もないから、たとえばナゴヤドームで昼は巨人×横浜戦、夜は中日×ヤクルト戦といった別カードのダブルヘッダーを組み入れていくことも一案である。

 世間では延期という言葉だけがひとり歩きしているが、延期期間は、あくまでプロ野球機構が全試合を西日本での試合に組み直すのに必要な期間をとる、という観点で決めるべきである。
 プロ野球選手も、他のサラリーマンと同様に仕事で生計を立てるために働かなくてはならない。今年、レギュラー獲得にかける若手や進退をかける中堅・ベテランにとっては、自らの人生をも左右する。
 試合数を減らすという対応だけは、とってはならない。前年から翌年にかけてつながる記録や年々蓄積する記録も、かけがえないほど重要なのだ。

 プロ野球機構のコミッショナー事務局長が文部科学省の通知をあいまいで分かりにくい、といった旨の発言をして物議を醸しているが、プロ野球機構は、監督官庁の意図を確実に把握して、電力不足に苦しむ東日本の人々に被害を与えないでほしいものである。





(2011年3月作成)

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