セリーグにもDH制の採用を
〜交流戦のセリーグ主催試合DH制特別企画を機に〜


犬山 翔太
 
 1.2014年の交流戦特別企画でDH制に手を入れたが

 2014年の交流戦は、DH制がセ・パの主催試合で例年と逆になる。
 セリーグ主催試合でDH制採用。
 パリーグ主催試合でDH制採用せず。

 交流戦10年目を記念しての特別企画である。
 トータルで考えると何も変わっていないわけで、あまりやる意味がないようにも感じられる。
 採用するメリットとしては、大谷が本拠地の札幌ドームで先発投手でありながらクリーンアップを打つ姿が見られるということくらいである。

 私は、個人的にセリーグでもDH制を採用してほしいと考えている。なぜなら、チャンスで投手の打席に回ってきてあっさり三振、という姿を見飽きるほど見て幻滅してきたからである。
 ここで、ベンチに座っている好打者のバッティングを見られたら、といつも想像してしまう。

 それに対し、DH制を採用しているパリーグにはそういったストレスがない。強打の捕手がいる場合は、1番から9番まで切れ目のない強力打線となり、投手は気を抜けないが、見ている側にとってはどこからでもチャンスが生まれる理想的な打線となる。

 それにしても、DH制に手を入れるなら、交流戦全体でDH制採用とすればよかったものを、どうして、未だセリーグはDH制を採用しないことにこだわるのだろうか。


 2.DH制のデメリット

 その答えともいえる文章がセントラルリーグの公式サイトに掲載されている。9項目にわたるデメリットが挙げられているので、引用してみる。

***引用開開始************************************
【セントラルリーグ公式サイト ご隠居さんの野球問答】から引用

セ・リーグは指名打者(DH)制を採用しないのですか。

 野球規則6.10には、「リーグは、指名打者ルールを使用することができる」と定められており、DH制を使用するかどうかは、各リーグの判断に委ねられています。  
  大リーグでは1973年にアメリカン・リーグがDH制を初めて採用し、日本ではパ・リーグが1975年からDH制を採用しました。しかし、当時、セ・リーグでは以下の観点から、DH制は採用しませんでした。
1. 1世紀半になろうとする野球の伝統を、あまりにも根本的にくつがえしすぎる。
2. 投手に代打を出す時期と人選は野球戦術の中心であり、その面白みをなくしてしまう。
3. 投手も攻撃に参加するという考え方をなくしてしまう。
4. DH制のルールがややこしくファンに混乱をおこさせる。
5. ベーブ・ルースやスタン・ミュージアルは投手から野手にかわって成功したのだが、そのような例がなくなる。
6. 仕返しの恐れがないので、投手が平気でビーンボールを投げる。
7. いい投手は完投するので得点力は大して上がらない。
8. 投手成績、打撃成績の比較が無意味になる。
9. バントが少なくなり野球の醍醐味がなくなる。

DH制の導入から四半世紀が過ぎましたが、セ・リーグでは現在も大筋で考えは変わっておらず、DH制を導入する予定はありません。
2005年から導入されたセ・パ交流戦では、パ・リーグ球団の主催試合のみDH制を採用しています。
***引用終了**************************************


 セリーグは、上記の9項目に及ぶデメリットを挙げて、セリーグがDH制をとらないことを宣言しているが、よく見てみると、9項目のうち、主なデメリットは、1と2である。
 3から9は、実情がどうかというところを考えると、3・4・5・8はどうでもいいことである。
 6は、実際にそのようなことが起こるのは稀であろうし、7は、先発・中継ぎ・抑えという分業制が年々進んでいるため、もはや過去の意見である。
 また、9は、実際に起こるであろうが、それが野球の醍醐味がなくなるのか、野球の醍醐味が増すのかは意見が分かれるところである。

 1については、野球の歴史を重視し、野球は9人でやるもの、10人にすると過去の記録の価値を損ねる、という抵抗がどうしても出てくる。
 私としても、パリーグがベストナインにDHも含めて10人選出することに対しては、未だに違和感を覚える。
「パリーグは、ベストナインじゃなくてベストテンだろ」
ということである。

 しかしながら、ルールというものは、時代と共に変化し、改善していくものだとも考えているので、プロ野球に関しては、プロレベルに達した打撃を見るために、DH制を採用すべきだと考えるのである。

 また、2の野球戦術の面白みをなくしてしまうというのは、確かに一理ある。セリーグでは、試合後半になると、投手の打席が回ってきたとき、先発投手なら続投させるかどうか、中継ぎ投手ならもう1回引っ張るかどうか、という見どころが出てくる。代打を出す場合は、どの打者を出すか、そして、そのまま守りにも就かせるのか、など、戦術面で様々な策を考える楽しみがある。

 とはいえ、パリーグであれば、ただ回ってきた9番打者がそのまま打席に入るだけとなることが多いから、セリーグの野球の方が細かく緻密になる。
 DH制を採用することで、セリーグとパリーグの同化が起こり、セリーグも豪快な野球になって、資金力で打者を集められる球団が有利になるという意見もあって、セリーグのDH制導入には否定的な意見も根強い。


 3.DH制を採用しないデメリット

 しかし、DH制にデメリットがあるように、DH制を採用しないデメリットも存在するはずである。 

1.プロレベルに達していない打撃技術の投手が凡退することにより、打線の流れが切れて、興冷めしてしまう。
2.レギュラーとして使える打者がパリーグより1人少なくなってしまう。
3.ベテラン、守備が下手な強打者の活躍の場が代打に限られてしまう。
4.出来が悪い投手でも、投手の打席でピンチを救われ、結果的に勝ててしまうことがある。
5.投手が打席に立つことで死球や打撃・走塁で故障する危険が高くなる。
6.ロングリリーフしたい投手も、打席が回ってくることで交代を余儀なくされる。

 パリーグは、力と力の豪快な野球を堪能でき、セリーグは緻密な戦略による細やかな野球を堪能できる。
 よく言われるセパの野球の違いは、DH制があるかないかによる部分が大きい。
 セパの野球のルールの違いと言えば、DH制があるかないかが大きな違いであるから当然と言えば当然ではある。

 私がセリーグの野球を見ていてDH制を採用してほしいというのは、上記に挙げた1と2の理由によるところが大きい。

 野球は、点が入らない投手戦よりも、得点が多く入る打撃戦の方が球場が盛り上がる。さらに、より多くの強打者を見られる方が嬉しい。

 端的に考えると、規定打席に到達する可能性のある打者がセリーグは、パリーグに比べて6人少なくなってしまう。
 パリーグにいれば、スターとして脚光を浴びることができる強打者も、セリーグでは代打専門でしか活躍できない。

 こう見てみると、セリーグの野球は、投手に優しい制度であり、パリーグは、打者に優しい制度である。
 どちらを優先させるかと考えた場合、私は、打者優先の方を推奨する。「セリーグ主催試合でDH制採用」という特別企画を1つの機会として、セリーグ公式戦すべてにDH制を採用する案を検討してもらいたい。




(2014年5月作成)

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