交流戦でセリーグが勝つために必要なもの
〜2年連続セリーグ惨敗の要因〜


犬山 翔太
 
 1.ここ2年間のセリーグ惨敗

 2011年、交流戦は、ソフトバンクが圧倒的な強さで制した。これで交流戦は、2005年の創設から7年連続でパリーグが優勝したことになる。
 しかも、全体ではパリーグが78勝57敗9引分と大きく勝ち越し、1位から3位までをパリーグ球団が独占した。
 報道では、セリーグの低迷が連日流れていて、パリーグの指名打者制がパリーグの投手を育てている、との見方が多い。

 しかし、そうであるならば、2005年から常にパがセを圧倒していてもいいはずだ。しかし、実際のところは、2007年と2010年、2011年を除いて、セリーグがパリーグに大きく負け越してはいない。

パ勝利 セ勝利 引分
2005 105 104 7
2006 108 107 1
2007 74 66 4
2008 73 71 0
2009 67 70 7
2010 81 59 4
2011 78 57 9

 上の勝敗表を見てみると、勝敗の差が20以上開いて、セパの格差が目立つようになったのは、この2年間なのである。
 となると、ここまで大きな差が2010年・2011年に生まれた要因は、パリーグの指名打者制の他にもあるのではないか。


 2.2010年と2011年の圧倒的な差の原因

 まず、2005年と2006年を見て見ると、パリーグは、わずか1勝の差しかない。パリーグとセリーグに大きな差があるとは考えにくいのが現実である。
 2007年以降は、試合数が減った。それに伴い、3連戦で組まれていた日程が2連戦で組まれるようになった。これにより、3連戦であれば2勝1敗か1勝2敗になっていたところが、2連勝か2連敗という圧勝か惨敗で終わるケースが増えた。
 それでも、2007年から2009年までの3年間ではパリーグが214勝207敗11引分であり、大きな差と呼ぶほどではない。

 ところが、2010年は、パリーグが22の貯金、2011年も、21の貯金と圧勝する結果が出た。
 打撃成績を打率で、投手成績を防御率でセパを比較すると、下記のようになる。
 2010年のチーム打撃成績は、パリーグ球団が1位〜3位、5〜6位、8位と上位を占めた。投手成績も1位〜5位、7位と上位を占めた。
 2011年のチーム打撃成績も、1〜3位、5位、7位、11位と上位に並び、投手成績も、1〜3位、5位、7位、9位である。
 打撃成績も投手成績もパリーグが圧倒している。そもそも、打者も投手も、セパの実力差が開いたのだ、と言ってしまえばそれまでだが、そこに至るには、何らかの要因があるはずである。

 打撃では9人目の打者の存在がある。パリーグ主催地での対戦に限られるが、指名打者制による9人目の打者が必要となる。そのとき、パリーグは、レギュラーの打者だが、セリーグは、控えの打者が打席に立つわけで、その差が少なからず影響を及ぼす。

 そして、記録から見ると、投手に大きく特長が出ている。それは、2連戦が続くだけに4人もしくは5人で安定してローテーションを回せる投手の存在である。2010年のオリックスは、山本省吾、金子千尋、近藤一樹、木佐貫洋、小松聖で安定して回している。
 また、2011年のソフトバンクは、和田毅、杉内俊哉、摂津正、ホールトンで安定して回している。このソフトバンクに次ぐ16勝を挙げ、驚異のチーム防御率1.35を記録した日本ハムも、ダルビッシュ有、ケッペル、武田勝、ウルフという安定した先発陣がもたらした結果である。

 その一方でここ2年、惨敗を喫したセリーグでは、安心してローテーションを任せられる投手が1人か2人という現状がある。そのため、24試合しかない交流戦という短期決戦において、貯金を作り出すことが困難になっている。
 唯一、この2年間でセリーグにおいて貯金を2011年に稼いだ中日は、吉見一起、チェン・ウェイン、ネルソン、川井雄太の先発4投手が安定していたためである。


 3.投手の4本柱確立のためには指名打者制

 こうして見てみると、セリーグが交流戦で勝つために最も必要なのは、安定した4人の先発投手を揃えることである。
 欲を言えば、5人揃えるのが理想ではあるが、3人揃えるのも困難な現状では、やはり4人である。4人いれば、1人が無理をして中4日で投げれば、1週間をしのげる場合もある。

 2010年と2011年の結果をみると、パリーグが交流戦に必要不可欠な投手力整備を的確にしている現実が見えてくる。
 さらには、2011年から飛ばない統一球に変更となったことに伴い、全体の1試合平均得点が2010年に比べて1.3点減少している。ますます投手力の重要性が増したのである。

 先制点を与えない先発投手、そして、1点差をしのげる投手力がこれまでにも以上に重要となってくる。
 そうなると、セリーグの各球団がもっと先発投手育成に力を入れなければならないのだが、それは、既にどの球団も承知だろう。分かっていても、なかなか先発投手が育たないのは、やはりセリーグの制度にある。結局、どんな側面からセリーグの敗因を探っても、根本原因は、指名打者制に行きつくのである。

 セリーグは、投手を打席に立たせることで、パリーグに比べて投手は、抑えることが容易い。さらに、指名打者がないことで、9人目の打者がなかなか育たない。
 1回り8人を抑えればいいセリーグと9人を抑えなければいけないパリーグ。そして、9人目の打者が控え選手のセリーグと、9人目の打者がレギュラーのパリーグ。
 その差は、小さいようで大きい。セリーグが交流戦でパリーグを今後互角に戦うためには、指名打者制を取り入れて、タフな先発投手を作り上げ、さらには9人目の打者も育てる相乗効果でパリーグと同一の戦力を整えられる環境が必要である。






(2011年7月作成)

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