2018年1月のコラム

犬山 翔太
 
 @星野仙一が成功させた「世紀のトレード」が私をプロ野球ファンに導いた

2018年01月14日

 私がプロ野球にここまで興味を持つようになったのは、1986年オフに中日の星野仙一監督が成功させた世紀のトレードが発端となっています。

 ロッテで2年連続三冠王の落合博満を獲得するために、各球団は、様々な検討を重ねましたが、ロッテが要求する選手を放出できる球団は、なかなか出てきませんでした。

 そんなとき、中日の監督に就任したばかりの星野仙一が落合博満獲得に動きます。
 落合は、長嶋茂雄ファンであるだけに、巨人に対する思い入れも強い。さらに、巨人は、3年間リーグ優勝から遠ざかり、1987年は、何としてもリーグ優勝したい。
 巨人が落合獲得の最有力球団でした。

 それでも、なかなかロッテと巨人のトレードは、進展しませんでした。
 ロッテは、原辰徳を要求したものの、巨人は、原だけは放出したくなかったからだと言われています。
 一時は、そのまま落合がロッテ残留で落ち着くのでは、という見方が強くなってきました。

 しかし、星野は、どうしても落合が巨人へ行ってほしくなかった。
 常に打倒巨人を目指してきた星野にとって、巨人が落合を獲得してしまえば、巨人が何連覇もしてしまうことになる、と危惧します。
 ただでさえ、クロマティ、原、吉村、篠塚、中畑と揃った打線がさらに強力となり、中日が太刀打ちできなくなってしまう。

 星野は、守護神の牛島和彦、レギュラー二塁手の上川誠二、中継ぎの平沼定晴、桑田茂の4人を交換要員として放出を決めます。
 そして、史上初となる1人対4人の「世紀のトレード」が成立したのです。

 本当に、当時の星野は、思い切ったことをしたものだと今でも驚きがあります。

1986年の4人の成績
 牛島和彦:35試合、3勝5敗16セーブ、防御率2.78
 上川誠二:129試合、打率.295、3本塁打、22打点
 平沼定晴:34試合、1勝2敗、防御率4.44
 桑田茂:25試合、2勝4敗、防御率4.19

 4人とも、1軍でバリバリのレギュラーとして活躍していた選手ですから、1人と交換なんて、通常ではありえない話です。

 落合が1986年に打率.360、50本塁打、116打点、出塁率.487を記録していたことを考慮しても、レギュラー4人は明らかにやりすぎです。

 なかなか現在の選手で例を挙げるのは、困難ではありますが、あえて例えるなら、柳田悠岐を獲得するために、田島慎二、京田陽太、又吉克樹、祖父江大輔の4人を放出するようなものです。

 仮に星野がリーグ優勝を果たせなかったら、袋叩きに遭っていたことでしょう。結果的に、落合を獲得したトレードは、実を結び、星野は、1988年、就任2年目にして中日をリーグ優勝に導きます。

 その後、落合は、中日の監督として、8年間で4度のリーグ優勝、5度の日本シリーズ進出を果たしてくれました。

 それゆえ、私にとっては、星野が監督として最初に行った「世紀のトレード」こそ、私をプロ野球ファンに導いてくれた最大の出来事となっています。改めて感謝申し上げます。


 AFAの人的補償は、指導者兼任選手を除外すべき

2018年01月28日

 東スポがスクープした岩瀬仁紀投手のFA人的補償騒動は、大きな衝撃を受けた。
 日本ハムから中日にFA移籍した大野奨太捕手の人的補償として、日本ハムが岩瀬仁紀投手を指名したという話だ。

 東スポの記事だけに、世間では半信半疑となっているが、さすがに作り話でここまで記事にするとは考えにくく、候補として上がっていた可能性が高い。

 私としては真偽は、どちらでも良いのだが、気になるのは、コーチ兼任であっても、人的補償の対象となる制度の是非である。

 人的補償としては、若手や中堅の有望選手を指名することが多い。40代のベテラン選手なら、あと2、3年で引退するのが濃厚であるから、長い目で見た戦力補強にならない。

 しかし、ベテラン選手の場合、実績に基づいて、ある程度、起用法や移籍後の成績が予測できる。さらに、練習方法や技術など、若い選手にとってプラスになる面もあり、将来的にはコーチとして活躍してもらう、という考え方もできる。

 そのため、ベテラン選手の人的補償は、多くはないが、決して稀とは言い難いのが実情である。
 主なベテラン選手の人的補償を見てみると、次のようになる。

 江藤智(巨人→西武)
 工藤公康(巨人→横浜)
 岡本真也(中日→西武)
 馬原孝浩(ソフトバンク→オリックス)

 江藤は、本塁打王と打点王の元二冠王であるし、工藤は、通算200勝以上を挙げた名球会投手、岡本は、元最優秀中継ぎ投手、馬原は、元セーブ王である。

 工藤が人的補償なら、名球会投手の岩瀬もありなのかな、と思う。
 しかし、岩瀬は、移籍を繰り返した工藤とは異なり、中日一筋の選手で、前人未到の404セーブを挙げた中日の至宝である。
 さらには、コーチ兼任となれば、中日は、さすがに岩瀬を指名してこないと読んだのだろう。

 私も、コーチ兼任が指名対象になるとは知らなかった。
 既にコーチとしての役割を与えられているなら、チーム編成上、指名できないのではないかと思っていたからだ。
 しかし、実際は、プロテクトした28名と新人選手以外は指名できる。

 そうなると、選手兼任監督であったとしても、指名できる理屈になる。
 これは、問題である。監督が指名されて移籍してしまえば、チーム構想が完全に崩れてしまう。

 やはり、現在の人的補償選手の規定に問題があると言わざるを得ない。
 いくら選手であっても、コーチ兼任、監督兼任の場合は、指名対象から除外すべきである。

 さらに、より良い方法を目指すのであれば、選手を犠牲にするやり方ではなく、FAで選手を放出した場合、金銭補償とともに、1年間外国人選手枠を1人増やすといった代替策を講じてほしい。
 人的補償という悲劇を生みがちな規定は、なくしてもらいたいものである。




(2018年1月作成)

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