2017年2月のコラム

犬山 翔太
 
 @落合GMを振り返る 4

2017年02月04日

 誰が指揮を執っても優勝できるチームを作り上げることは難しい。
 時おりそういうチームが出現する年もあるが、近年は豊富な資金力によって意図的に作り上げられたチームが多い。
 たとえば、10ゲーム以上を離してリーグ優勝した2012年、2013年の巨人、2011年、2015年のソフトバンクなどはその傾向が強い。

 2016年の広島は、2位に17.5ゲームの大差をつけてリーグ優勝を果たすが、エース前田健太が抜けて圧倒的な強さを発揮するとは思えなかっただけに、その勢いには驚かざるを得ない。
 野村、新井、鈴木、中崎らが想定以上の働きを見せ、黒田、ジョンソン、菊池、丸らが実力どおりの成績を残して、すべてがうまくかみ合った結果を言うことができるだろう。

 落合GMも、2年間で世代交代と若手選手の整備を行い、右肩下がりではなく、右肩上がりが期待できる若いチームに変貌させてきた。
 中日も、ビシエド、大野、吉見、若松、平田、高橋、大島、福田ら、実力ある選手は揃っており、すべてがうまくかみ合えば、リーグ優勝とは言わないまでもAクラスに入れるだけの戦いはできるはず。
 2016年のシーズン前は、どのチームも抜け出すには決め手にかけるという前評判であったため、采配次第ではAクラスに入れるのではないか、という淡い期待があった。

 4番にビシエドが座ることによって開幕直後は安定した戦いぶりを見せていた中日は、4月を3位で終える。
 5月も同率ながら2位。しかし、ビシエドの調子が落ちた6月には4位、7月には5位、8月に最下位に落ちると再び浮上することはなかった。
 不振に陥ったビシエドを誰も穴埋めできなかったことや高橋、大野、平田らが故障離脱したことも大きかったが、最も大きかったのは、勝てる先発投手と、守護神につなげる安定したセットアッパーが現れなかったことである。
 又吉、福谷の不調によって崩れたリリーフ陣を補強すべく、シーズン途中にはセプティモを獲得したが、効果は発揮できなかった。そして、8月には衝撃の谷繁監督解任という人事があったが、崩れたチームを立て直すまでには至らなかった。

 それでも、チーム防御率は4位であり、最下位になるほど投手力が弱かったわけではない。5位だったチーム打率と長打率、出塁率といった打撃力の弱さとの兼ね合いで最下位になってしまったと言うべきだろう。

 中日の黄金時代は、突出した投手力とともにあった。中日が優勝争いに加わるためには、チーム防御率1位、2位を争うような投手力に整備をする必要がある。

 中日が2017年の監督に森繁和を据えたことは、中日が再び投手を中心とした守りの野球を取り戻す決意が感じられる。森は、言わずと知れた落合政権下で投手コーチとして鉄壁の投手陣を作り上げた人物であり、その手腕は右に出る者はいない。
 また、ビシエド1人頼みの打線から脱却を図るため、大砲であるゲレーロを獲得。西武の強力打線を育ててきた土井正博を打撃コーチに招いて打線の強化も見込める。

 ドラフトでも柳を獲得し、前年に獲得した小笠原、佐藤という3人の将来のエース候補が揃い、チーム力が今後上がっていくことが想定できる。
 また、三ツ間が支配下選手となり、セットアッパーとしての期待もかかる。

 落合GM自身は、2016年の成績が最下位であったこともあってか1月末をもって任期満了で退団となった。
 しかし、2016年の2軍がソフトバンクと優勝争いをして2位になるなど、若いチーム力の底上げを行い、2017年の陣容を整えただけに、もう1年契約を延長してもらいたかったというのが本音である。

 この3年間で落合GMが獲得した選手たちが今後どのような成績を残すか。
 落合GMを正しく評価するには、2017年、2018年の中日が残す結果を待たねばならない。


 A中日のGM制度は失敗だったのか
   〜落合GMを振り返る 終章〜


2017年02月12日

 果たして中日のGM制度は、失敗だったのか。
 最近3年間の成績から判断すると、誰が見ても失敗という結論を出すだろう。落合GMも、3年間で結果を残せると踏んだからこそ3年契約にしたのだ。
 3年間で結果を残せず、さらには自ら起用した谷繁元信監督が就任3年目で最下位に転落して途中解任となった事実は重い。

 しかし、本当に失敗であったかどうかは、あと2、3年の成績を見る必要がある。落合GMの任期は、2017年1月末であり、2月1日からキャンプインすることを考えれば、実質2017年の編成を終えて退任したということになる。
 2017年の成績も、落合GMの編成と成績が直結するわけで、2017年が集大成と言っても過言ではない。

 また、落合GMがドラフトに関与したのは、2015年以降の選手であり、2017年の新人選手も含めて、彼らが本当に力を発揮するのは、今後2、3年の成長ぶりを見なければならない。
 また、落合GMが招いたコーチの育成能力が結果として出てくるのも、今後、2、3年の結果を待たねばならない。

 一度沈んだチームを立て直すのは、極めて困難である。広島カープのように前回の優勝から25年かかったのは極端ではあるが、優勝から次の優勝まで10年以上遠ざかることは珍しくない。

 かつて、ダイエーホークスを率いた根本陸夫は、1993年から2年間監督を務めた後、王貞治に監督を譲って専務として編成を担当した。弱小チームだったダイエーは、根本の下で力を徐々につけて、根本がダイエーに来てから6年目の1998年にようやくAクラスの3位に入り、7年目の1999年にリーグ優勝を果たす。
 本来は、このように6、7年かかるチーム作りを落合GMは、3年間でやろうとしたことに無理があったと考えるべきだろう。

 落合GMが退任したことにより、日本では今後、GM制度が日本球界には不向きであるという潮流が起きる可能性が高い。
 日本ではGMの編成能力が効果を発揮して、リーグ優勝を果たしたという事例はまだないことも、その追い風になるだろう。

 こう書くと、日本ハムが2008年からGMを置いて、2009年、2012年、2016年とリーグ優勝を果たしているという反論が来るかもしれない。
 日本ハムの好成績をGMの編成能力と言えなくもないのだが、日本ハムは、GMを置く前の2006年、2007年にも連覇を果たしており、元々強かった。
 さらには、ダルビッシュ有や大谷翔平といった絶対的エースがおり、大事な試合ではほぼ確実に勝つことができた。
 さらには、他球団と比較してドラフト運もあり、育成能力も高い。
 そういった様々な要因が重なって、日本ハムは、ここ11年間にわたって黄金時代を築いてきたのである。

 GM制度が今後、再評価をされるなら、中日が2017年から2020年の間にリーグ優勝を果たした時だろう。
 幸い、落合GMが編成したコーチ陣は、健在であり、監督は、落合の参謀と呼ばれた森繁和である。
 かつてのダイエーのように、ここから中日が浮上することを期待したい。


 B執行猶予期間中に見たい清原の活躍

2017年02月18日

 ASKAの告白本『700番 第二巻/第三巻』がAmazonで予約開始早々に1位を獲得し、発売開始後もわずか1日で重版が決定した。ニューアルバム『Too many people』もAmazonで予約開始早々に1位を獲得している。

 別に法令でも何でもないコンプライアンスという日本企業独自のルールでASKAの作品は、それまで販売中止となっていたが、ASKAは、それを執行猶予期間中に実力で覆し、流通業界は掌を返して大々的に売り出し始めた。
 社会を変えていくのは突出した才能を持つ一部の人である。

 そんなとき、ASKAと同じように執行期間中の清原和博もテレビで話題に上がっていた。
 台本なのかもしれないが、テレビでは元教師やアイドルタレントがASKAのテレビ出演を批判していた。そんな中で、清原も野球解説で出てくるのは違和感があるのに、ASKAが音楽活動で出演するのはありえないという論調になっていた。

 テレビの発言は怖い。その分野には一介の素人であっても、キャスターやコメンテーターとして発言すれば、それが正しい発言として全国の人々に届けられる。 
 ASKAのテレビ出演を批判しながら、清原和博の野球界復帰をも否定していく論調は、まるで集団でのいじめと同じである。執行猶予中の人々が世間でどのような扱いを受けているかが分かる。

 考えてみれば、執行猶予中の人々が働けないと、資産がなければ生活保護を受けて暮らすことになる。生活保護の費用は、税金から出るわけだ。
 なのに、報道を筆頭に執行猶予中に普通に働くことに対する批判が多いということは、あまりにも視野が狭いと言わざるを得ない。

 ビートたけしは、野球界が清原和博の更生を助けていく気概が欲しいという旨の提言をしているが、このままでは清原は、執行猶予中は野球界で仕事をすることができず、執行猶予期間が終わっても、ほとんど野球界で仕事をすることができないだろう。

 清原の場合、現役選手として復帰することはもはや不可能であるから、野球界に貢献するには、野球解説者や野球指導者としてだ。
 私としては、むしろ執行猶予期間中に表舞台で更生していく姿を見せることで、全国の執行猶予期間中の人々への励みとなってほしいと願う。

 西武で黄金時代を築き、現役通算525本塁打を放った稀代の名選手である清原が執行猶予中であっても、早く表舞台に姿を見せ、更生の道を歩めるよう、野球界はサポートしてほしいものである。


 CWBCは、お祭りであってほしい

2017年02月25日

 来月上旬から2017年のWBCが始まる。
 そこへ、この第4回大会で打ち切りと言われていたWBCが存続するというニュースが飛び込んできた。

 私は、WBCを野球の世界普及のために続けて、いずれはサッカーW杯のように育ってほしいと願っているので、喜ばしいニュースである。

 その一方で、WBCに出場する選手たちに故障のリスクがつきまとうことも覚悟せねばならなくなった。

 日本人の国際大会に対するのめり込みは、かなりのものである。お国柄によって大きく異なるとはいえ、日本人は、国を背負ってという意識が高い部類に入るのではないかと思う。

 あのイチローでさえ胃潰瘍になり、松坂大輔はWBCで2大会連続MVPになった後、故障に悩まされている。石井弘寿は、WBCでの故障が引退の原因となった。
 WBC以外でも、アテネ五輪では、谷佳知が右脚を負傷してその後の現役生活に影響した。川上憲伸は、このときの酷使が原因で故障に苦しむようになった。そして、何より北京五輪でメダルを逃したときのバッシングは、切ないものがあった。

 だが、時間と共に感傷も風化する。今となっては1位であっても4位であっても、そう大した違いではない。

 WBCでは、もちろん世界一を目指すことは大切ではあるが、選手生命を脅かすほど入れ込んでプレーする必要はない。
 選手にはオールスターゲームに出場するような気持ちでプレーしてもらうのが理想だ。最近の日本のオールスターゲームは、直球を投げてフルスイングで返すというお祭りの側面があまりにも大きくなっているようには感じるが、あれほどではなくとも、オープン戦くらいの感覚でいい。

 特にWBCの準決勝、決勝は、ほぼ先発投手の出来不出来に勝敗が左右されるという一発勝負なだけに、勝敗が時の運という側面が強い。
 日本が第1回、第2回と連続で世界一になったのも、チームの総合力が高かったのと同じくらい運があった。

 WBCは、活躍すれば、大リーグから注目され、将来大リーグ挑戦を考えている選手にとっては死力を尽くすメリットはあるかもしれない。だが、それ以外の選手にとっては、他国の大リーガーのようにシーズン前の調整試合という考え方でいいのだ。
 無理して、選手生命に影響してしまうようなプレーには気を付けてもらいたい。







(2017年3月作成)

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