2017年1月のコラム

犬山 翔太
 
 @清原和博のために、たけしが野球界に求めるもの

2017年01月02日

 12/29のテレビ番組『ニュースキャスター』では清原和博のインタビューが放映された。
 巨人時代以降の番長清原ではなく、西武時代以前のキヨマーの姿が少し戻ってきていたのは印象的であったが、それ以上に注目すべきはビートたけしの発言である。

 これまでのニュース、ワイドショーは、薬物依存で逮捕された者に対して、容疑者の段階から徹底的に叩き、社会復帰するのさえ困難なまで社会的制裁を与えるのが常であった。それが法令遵守に則り、スポンサーの顔色だけを伺うキャスターたちのあり方だ。世論を悪い方へと煽る先導をする。テレビが人気を急激に失っているのはそういった旧態依然さも1つの要因であろう。

 しかし、今回のビートたけしの発言は、それを真っ向から否定してくれた。
「野球界で支えてコーチなり監督なりになっていけば絶対に輝く」
「野球界が受け止めてくれる許容の広さがほしい」
「永久追放みたいなこと言うからダメ」
 脳の病気であるがゆえに、これまで多くの人々の期待を背負って夢を与えてきたスターを野球界で結束して支える気概が欲しいという旨を述べてくれたのである。
 これこそ、私がテレビでずっと聞きたかった温もりのある発言であり、薬物依存症を客観的に判断した意見であった。さすがは、視野が広く、多方面で天才的な活躍を見せるたけしである。

 一般庶民は、日常生活をしていて覚せい剤に触れる機会はほぼないので、その依存症が別世界のように感じてしまうが、依存症は、覚せい剤だけの問題ではない。
 酒に依存している者、タバコに依存している者、ギャンブルに依存している者、テレビに依存している者、スマホに依存している者、恋人や家族に依存している者……。
 人は、多かれ少なかれ、何かの依存症を抱えて生きている。

 仮に依存する対象が法律で禁止され、懲役刑が課せられることになった場合、果たしてきっぱりとやめられるだろうか。
 中には、法令遵守のため、きっぱりとやめる者もいるだろうが、大抵の者はやめることができないのではないか。

 覚せい剤への依存症は、他の依存よりもかなり強力で、自力ではなかなか抜け出せない病気であるという。
 なのに、今の社会は、彼らの仕事や生きがいさえも奪おうとする。そして、あたかもそれが当然であるかのごとく肯定される。
 たとえば、ASKAは、執行猶予がついて働かなければならない身なのに、CDやDVD等がすべて販売中止、さらにはどのスタジオもコンプライアンスの名目で使用できなくして、社会復帰すらできない状況にされた。
 恐ろしいことに、社会全体が更生を阻む行為を平気な顔でやるのである。

 病人を前にした場合、必ずしも法律やコンプライアンスが正しいとは限らない。
 アメリカは、収監よりも治療を最優先し、社会復帰して更生できるよう支援する。
 日本プロ野球は、アメリカ大リーグのルールを模倣して適用することで発展してきて、現在も1、2年遅れて適用して追いつくというやり方をとっている。覚せい剤依存症に対する考え方も、遅れた日本の考え方を早く改め、アメリカのように、社会が更生を支援していける制度に整備していく必要がある。

 清原は、高校時代からプロ野球の現役時代まで四半世紀に渡って、日本中の期待を背負い、人々の生活に夢と希望と潤いを与えてきた。世間が与える過度な期待とプレッシャーが清原の人生を狂わせてしまったと言えなくはない。
 だからこそ、私は、清原が野球界で再び輝ける場を作ってもらいたいと願う。


 A田澤ルールの撤廃を

2017年01月14日

 田澤純一が2016年12月にマーリンズと2年1200万ドルで契約を結んだ。年俸は約7億円ということで、田澤がセットアッパーとして一流の評価を受けていることがうかがえる。

 マーリンズと契約する前、レッドソックスが2016年中にFA権を得る田澤と2017年以降の契約を結ばないという報道があり、田澤ルールが話題になりかけた。
 もちろん、田澤は、大リーグで多くの球団が欲しがる投手である。2016年の成績は、3勝2敗16ホールド、防御率4.23。防御率は、大リーグでセットアッパーとして活躍しているここ5年の中では最も悪いが、奪三振率は最も高く、決して状態が悪いわけではない。たまたまコントロールミスによる被本塁打が多かったためと考えられる。

 それゆえ、田澤が大リーグと契約できず、行き先が決まらないということはあり得ないと思っていたが、一部報道で所属球団がなくて浪人生活になるのではという憶測があったため、田澤ルールが顔を出してきたわけである。

 田澤は、2008年の都市対抗野球で優勝して事実上のMVPにあたる橋戸賞を受賞して、大リーグ挑戦を表明する。
 それまでドラフト1位候補が日本プロ野球に入団せず、大リーグに挑戦するというのは前例がなかったので、日本中が騒然となった。

 アマチュア有望選手の流出に大きな危機感を抱いた日本プロ野球機構は、ドラフトを拒否して海外のプロ球団と契約した場合、大卒・社会人選手は2年間、高卒選手は3年間にわたって日本プロ野球球団と契約できないルールを作ってしまった。
 これが悪名高い田澤ルールである。

 私は、田澤ルールに当時から反対で、そんなルールを作るくらいなら外国人選手枠を広げて日本プロ野球の質を維持・向上させた方がいいという考えていた。

 そのため、田澤が大リーグを代表する投手となってからも、いつの日か日本に戻りたいという状況が訪れたとき、田澤ルールは、大きな社会問題になるのではないかと思っている。

 そうならないためにも、田澤ルールは、過ちであったと認めて撤廃してほしい。
 仮に田澤が大リーグで40代まで活躍して、選手生命を全うしたとしても、次に続く選手が必ず田澤ルールによって悲劇を生み出すからである。


 B落合GMを振り返る 2

2017年01月22日

 2014年のオフは、落合GMが1年間チーム状況やアマチュア野球を見て編成するということで大きな期待を持った。

 ドラフト会議で、中日は、社会人と大学生ばかりを指名し、その数は9人に上った。ドラフト1位の野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜)は、落合GMが高評価したということで大きな話題になった。 連投しても球威が落ちず安定感があることを評価し、単独での1位指名であった。

 その他にも独特の投球フォームを持つ2位指名の投手浜田智博、3位で指名した守備力に定評のある外野手友永翔太と、中日の補強ポイントを埋めていく指名を行った。

 さらには、育成ドラフトで将来性を買った4人を指名。高校生3人と大学生1人である。
 中日は、結果としてセリーグ最多の13人を指名し、Bクラスからの脱出に向けた意気込みを示した。

 中日は、補強も進め、かつて日本ハムで新人王を獲得した八木智哉を獲得する。オリックスでは1軍でなかなか登板機会を得られなかったが、2軍では抜群の成績を残しており、再生できると判断したのである。落合GMにとっては、監督時代に日本シリーズで対戦し、その実力は熟知しているだけに、当時の状態に戻せばエース級の活躍も期待できた。

 さらに、ソフトバンクの育成選手である内野手亀澤恭平も獲得。これは、落合GMが育成選手契約期間が3年で終了するというルールを考慮し、その契約切れを狙って支配下選手として獲得にこぎつけたのである。

 外国人選手も、アベレージヒッターのナニータを獲得するなど、着々とBクラス脱出に向けて戦力を整えていく中日。球団に資金力がなく、現役大リーガーやFA選手を獲得することは困難を極めるが、限られた予算の中で最善を尽くした補強であった。
 私は、Bクラス脱出どころか、優勝も争えるのではないかと予想していた。

 2015年の出足は、好調だった。打撃では福田、亀澤を始め、ルナ、ナニータ、エルナンデスが好調で投手陣も安定し、4月半ばに首位に立つなど、過去3年とは異なる強さを見せていた。
 しかし、エース吉見が離脱し、守備にもほころびが見え始め、さらには又吉、福谷のリリーフ陣が崩れると、徐々に後退していき、5月下旬には4位に転落。
 最終的な順位は5位に終わってしまった。

 2015年は、選手層の薄さを露呈した1年となった。ルナ、ナニータは、故障に弱い。若手は好不調の波が大きい。エース吉見は故障離脱で、左のエース大野は不安定。八木も広島戦以外は不安定。ベテラン捕手谷繁も監督兼任で、故障がち。
 そして、故障や不調によって空いた穴を埋める選手がほとんど現れなかった。
 即戦力を期待した新人選手の中からは、遠藤が少し活躍したものの、ドラフト1位から3位までの選手たちが台頭してくれなかった。1年目に多くの期待をかけるのは酷ではあるが、それを期待せざるをえないほど選手層は薄かった。

 さらには、シーズン前に外国人大砲を探していながら獲得できなかったのが大きく響いた。シーズン本塁打は平田の13本が最高という惨状となり、得点力不足に悩んだ。

 試合では、点が取れないから打撃重視のオーダーを組む。すると、守備が崩れて失点が増える。守備を固めると、投手陣がリードを守り切れない。そんな後手後手の采配も絡み、チームは沈んで行った。

 守備力の向上に、若手の成績の安定。故障に強く、本塁打を打てる外国人選手の獲得。チームの柱になる存在の台頭。谷繁の後継者育成。
 様々な課題を抱えて、2015年が終わって行った。


 C落合GMを振り返る 3

2017年01月28日

 5位に沈んだ2015年。
 そのシーズンに対するGMとしての役割は、シーズン前には一段落している。シーズン前までに考えた布陣をどう生かすかは、現場の首脳陣の仕事であるからだ。
 世間では落合GMは、現場の采配にも介入できるかのような印象を持っている節があるが、振り返ってみると、実際にはオーナーのアドバイザーとしての役割にほぼ限定されていた。
 2015年中盤以降、落合が監督であったなら、と考えてしまうほど、現場が機能しなくなってしまったが、落合の現場復帰は噂のみで終息し、実現しなかった。

 しかし、落合GMは、中日が沈んでいくのをただ手をこまねいて見ていたわけで
はない。
 7月には四国アイランドリーグの香川オリーブガイナーズに所属する外国人投手ネイラーを獲得。ネイラーは、その年、防御率1.37という抜群の成績を残しており、投手陣の強化が必要な中日にはうってつけであった。
 ネイラーは、8月に1軍デビューすると、その年、4勝を挙げる活躍を見せた。

 また、落合GMは、ネイラーと同時に大リーグ経験のある外国人左腕投手ペレスを獲得。リリーフ陣の強化が期待したが、大リーガー時代の投球を見せることができず、戦力とならなかった。

 しかし、外国人選手は、ハイリスクである。2人の選手のうち1人がそこそこ戦力になったということで、補強自体はまずまずであったと言うべきだろう。

 チームが弱体化すると、どうしても黄金時代と今を比較してしまう。15勝前後を稼ぐエース、30本塁打前後を稼ぐ四番、安定した正捕手、安心できる抑え。黄金時代にいた存在が誰も存在しなくなった中日は、2016年にAクラス入りするためには、かなりの底上げと世代交代、補強が必要なのは明白であった。

 2015年のオフは、多くのベテラン選手が退団することになった。チーム力を高めるためには、どうしても必要な世代交代を落合GMは断行したのである。
 200勝投手の山本昌、そして、黄金時代を支えた谷繁元信、和田一浩、朝倉健太が引退。高橋聡文はFAで阪神に移籍した。
 さらには小笠原道大も引退、ルナと山内壮馬も退団となった。

 そんな中、森ヘッドコーチは、ついに四番候補となる外国人大砲ビシエドの獲得に成功する。
 さらに、投手陣強化のため、外国人投手のジョーダンとハイメを獲得する。

 また、ドラフトでも、将来のエース候補である小笠原慎之介と佐藤優を獲得。ドラフトの本指名での6人に加え、育成選手での指名も7人に及んだ。
 ドラフトでは前年に引き続き、大学・社会人の即戦力候補が中心となり、高校生は小笠原のみとなった。
 そして、金銭トレードでソフトバンクからかつてのドラフト1位投手大場翔太を獲得。DeNAを自由契約になったベテラン大砲多村仁志も獲得した。
 
 退団したベテラン選手の穴を埋めて、さらに上積みできる選手が現れるか。
 入団した多くの選手たちを首脳陣が的確に指導できるか。 
 大幅に入れ替わったメンバーを首脳陣が巧みに起用できるか。

 そういった不安はありながらも、順調に行けば、Aクラスは、狙えるだけの戦力を整えていったのである。




(2017年3月作成)

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