2016年12月のコラム

犬山 翔太
 
 @巨人の補強に思う

2016年12月10日

 今年のオフの巨人の補強は、目を見張るものがある。DeNAのエース格である山口俊を獲得した他、ソフトバンクのセットアッパーとして実績を残した森福允彦を獲得。元楽天のマギーも獲得した。
 さらに、日本ハムの名外野手である陽岱鋼の獲得も実現しそうな気配であり、大リーグのMAX164キロ投手カミネロの獲得も目指している。
 巨人は、リーグ優勝を宿命づけられた球界の盟主だけに、3年連続でリーグ優勝を逃すことはどうしても避けたいのだろう。

 思い起こせば、2011年に中日がリーグ2連覇を達成した後の巨人の補強もすさまじかった。
 ソフトバンクのエース杉内俊哉を獲得し、さらにソフトバンクのエース級でシーズン19勝を挙げていたホールトンを獲得。横浜の四番打者村田修一も獲得した。
 さらには、マシソン、ボウカーを獲得して、シーズン途中にはエドガーの再獲得も行った。

 なりふり構わぬ補強が実り、巨人は、2012年に3年ぶりのリーグ優勝を果たすわけだが、このオフの巨人も、3年ぶりのリーグ優勝に向けてなりふり構わぬ補強が復活した。

 かつては、そんな巨人の補強に補強を重ねるやり方を苦々しく見ていたものだが、最近は、長い目で見るようになって、巨人の補強がプロ野球を面白くしていると感じるようになった。

 巨人が補強して圧倒的な戦力になってリーグ優勝する。
 その後、巨人の補強した選手が衰えてきて、自前の戦力を育てたり、格安外国人選手を当てた球団がリーグ優勝する。
 そして、巨人がまた新たな補強を行い、圧倒的な戦力でリーグ優勝する。
 その後、巨人の補強した選手が衰えてきて……。

 セリーグのプロ野球は、この繰り返しなのである。
 だから2015年、2016年のプロ野球は、面白かった。どこがリーグ優勝するか分からない実力伯仲の中で、この球団が飛び出すんだ、という驚きもあった。
 2010年、2011年も、同じように面白い状況であったから、2012年から2014年まではちょっとつまらなかった。

 巨人がこれ以上補強すると、2017年から2、3年くらい、巨人の独断場になって、ペナントレースがつまらなくなってしまう可能性はあるが、その後はまた面白い野球が戻ってくる。
 ただ、巨人が優勝するとしても、圧倒的なリーグ優勝は面白くないので、何とか僅差でリーグ優勝できる程度の補強に留めておいてほしいのが本音である。


 A育成選手から支配下に上がった2投手への期待

2016年12月18日

 私の世代では、雑草のように下から這い上がって一流になる選手と言えば、ドラフト外入団が脳裏に浮かぶのだが、現在では育成入団選手である。

 私は、ドラフト外で入団して活躍する選手が好きだった。高校生の頃から頭角を現して鳴り物入りで入団する選手ではなく、注目されずにひっそりと入団しながら、類まれな努力で開花して一流になる選手。

 巨人のエースとなって通算165勝を挙げた西本聖や広島のエース・守護神として148勝138セーブを挙げた大野豊などは、野球に対する取り組み方も含めて、あこがれの選手であった。

 そのため、現在なら、育成選手から支配下選手となって1軍に昇格し、一流になった選手が好きになる。
 巨人で長年セットアッパーを務める山口鉄也やロッテで守備の名手の名をほしいままにする岡田幸文、ソフトバンクのエース級となりつつある千賀滉大らである。
 今後も、育成選手から日本を代表する選手が次々と現れてくることだろう。

 2016年のオフに育成選手から支配下選手となった中日の三ツ間卓也と岸本淳希は、早く一流選手の仲間入りをしてほしい選手である。

 特に三ツ間は、サイドからの剛速球と切れのある変化球を持っており、かなりの活躍が見込める。
 2016年の成績は、ウエスタンリーグで35試合に投げて5勝2敗2セーブ、防御率2.19と、他の支配下選手と比べてもトップクラスの成績を残している。中継ぎとしてなら、今すぐにでも1軍で活躍できそうである。
 一方、岸本もウエスタンリーグで5試合登板ながら防御率1.80を残した。今後の成長が楽しみな存在だ。

 ただ、2軍で抑えられるから1軍でも抑えられるかと言えば、何とも言い難い。2軍では圧倒的な投球をしながら1軍では打たれてしまった福谷のような投手もいるからだ。それでも、ソフトバンクや巨人のように、2軍でも1軍とそん色ないメンバーを揃えていることを考えると、2軍で活躍すれば1軍でもかなり高い確率で活躍できるはずである。

 中日の2軍は、2016年に大きく躍進し、佐藤優や阿知良拓馬らも成長著しい。
 森繁和が新監督となり、投手王国再建に向け、着々と投手陣の整備が進んでいる。しかし、最下位からの出発となるたけに、2軍の選手が1軍に入り込む隙は先発でもリリーフにもある。三ツ間と岸谷が1軍の投手陣に入って底上げしてくれることに期待したい。


 B落合GMを振り返る

2016年12月24日

 2016/12/21、中日の落合GMの退任が発表された。
 3年間の任期が満了し、中日が契約を更新しなかったからだ。

 中日が契約を更新しないという方針をとったことには驚きはなかったが、3年連続Bクラスという結果になったことは驚きがある。

 2013年オフに落合がGMに就任し、谷繁が監督、森繁和がヘッドコーチに就任したとき、私は、中日が再び常勝チームになることを疑っていなかった。

 かつての中日であれば、星野仙一が行ったように、大型補強を断行して浮上させることができたはずだ。
 しかし、時代が変わり、新聞が売れなくなってきている今、大型補強をする予算はなく、予算をかけずに浮上させなければいけない、という難題があった。

 他の人なら不可能でも落合なら可能だと私が思ったのには理由があった。落合は、監督時代に2008年以降、福留や川上、ウッズ、中村紀といった主力選手が抜ける状況となりながら、チームを立て直してリーグ2連覇を達成した実績がある。

 おそらく、2013年オフの中日も、同じようなことを考えたはずだ。しかし、現実は、落合でも不可能であったという結果が残った。
 高木守道監督の2年間で崩壊してしまったチームは、3年間で立て直せるほど甘くなかったということだ。
 崩壊したチームを立て直すには、崩壊した期間の2倍はかかると思っていたので、もう1年落合GMを残して様子を見たかった気もあるが、そこは、最初に3年契約としてしまったからには、仕方のない話である。

 振り返ってみると、落合GMは、チーム立て直しの特効薬として、非情なまでのコストカットを行い、嫌われ役となった。特に監督時代に重用していた井端弘和を放出したのはその象徴でもあった。故障がちになり、高木監督との軋轢もあったことで、放出せざるを得ない事情もあった。

 その特効薬は、7月末までは貯金2を維持して効果を発揮していた。しかし、8月に入ると、和田、吉見、岩瀬、森野、エルナンデスとレギュラー選手が次々と離脱する事態に見舞われ、8月を7勝20敗と負け越して、前年と同じ4位に終わった。

 それでも、67勝73敗4分の借金6と前年の借金13から半分以下に減らして期待を持たせてくれる結果となった。

 落合GMは、就任早々にトライアウトで日本ハムを皮切りに3球団を渡り歩いた名外野手工藤隆人を獲得し、工藤も期待に応えて46試合で打率.308を残す活躍を見せた。
 また、シーズン途中で獲得した捕手の武山真吾も、33試合に出場して強肩を武器に盗塁阻止率.412を記録する活躍を見せた。

 この調子で行けば、2015年は、もっと浮上できると思ったものである。


 CASKAの復帰作に、清原和博の復帰を想う

2016年12月29日

 ミュージシャンのASKAが復帰作となる新曲「FUKUOKA」をYouTubeに発表した。ASKAを温かく迎え入れ、復帰を手助けしてくれた故郷福岡の人々に向けて感謝と郷愁を描いた名曲で、わずか4日で100万視聴を突破した。
 世間ではASKAの類まれな才能を絶賛する声が相次いでおり、「FUKUOKA」を収録したニューアルバムの発売や今後の活動に向けて追い風が吹いている。

 ミュージシャンは、生涯現役を続けることができる。自ら楽曲を制作して発表し、聴衆がそれに共感すれば、世間の評価を一変させられるのだ。

 しかし、プロ野球選手は……。
 生涯現役を続けられるわけではない。一流選手であっても現役でいられるのは20年程度だ。中には山本昌のような怪物もいるが、それでも30年程度しか現役ではいられない。

 清原は現役時代に525本塁打を記録した。しかし、最後の本塁打を放ったのは、もう10年前になる。
 現在の少年は、もう清原の現役時代を知らない。20代でようやく清原が巨人で活躍していた頃を知っているだろうか。

 清原が西武で活躍していた頃を知っているのが30代、清原が高校時代に甲子園で活躍していたのを知っているのは40代以上になってしまう。

 現在の清原が現役選手としてプロ野球で本塁打を量産することは、もはや不可能だ。
 いつまでも名誉挽回の機会があるミュージシャンとは、大きく立場が異なってくる。

 清原が名誉挽回をするならば、野球界で指導者として結果を残すか、スポーツ振興で社会貢献するか等の方法となる。
 野球や子供をこよなく愛していることは、画面の中からも伝わってくるので、何とか清原がスポーツ界で活躍できる場を与えてほしい。

 ASKAと清原は、私にとって、学生時代の2大スターと言っても過言ではない存在である。心身ともに健康に過ごしてほしいと願わずにはいられない。





(2016年12月作成)

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