2016年11月のコラム

犬山 翔太
 
 @大島と平田に望むこと

2016年11月05日

 大島洋平が残留を表明したのに続いて、平田良介も残留が濃厚と報道されている。2人ともFA宣言するのではないかと言われていただけに、ここ数日の報道が意外に聴こえるが、実際は、マスコミに踊らされていただけなのかもしれない。

 中日の野手では、ここ数年でレギュラーと言えばこの2人しかいないので、残留してくれるとなると一安心である。

 しかし、2016年は、中日が最下位に沈んだだけに、今年の成績のままでは、来年も低迷してしまうことになりかねない。
 他の選手との打線の流れもあるが、今年を大きく超える成績を残してくれなければ、浮上は見込めない。

 大島の場合、打率.292、26盗塁を残しているが、ここ7年間は、隔年で打撃の好不調を繰り返しており、順番から行くと来年が不調の年になってしまうだけに、不安要素が多い。
 今年の打率.292にしても、大島の打撃技術からすれば不満が残る結果であり、本来であれば.330くらいは残して首位打者争いをしてほしい打者である。今年の成績に満足しないでもらいたい。

 また、毎年、広い守備範囲を誇って刺殺を稼いでくれるのは、何よりも貴重ではあるが、肩の状態に波があるため、万全の肩に仕上げてもらいたいものだ。

 平田の場合は、パンチ力と勝負強さがよくクローズアップされるが、平田の魅力は、堅実な守備力である。大島と同じくらい広い守備力を持ち、肩も強くてコントロールもいい。
 ずんぐりとした体型のせいか、日本を代表する守備力があまり評価されていないのだが、平田こそ中日が最も理想とする外野手である。

 ただ、打撃面では、ファンの間でも小さくまとまり過ぎているという評価が多い。
 ファンとしては、3割20本塁打を期待してしまうのだが、平田はまだ3割も20本塁打も一度も達成したことがない。

 特に今年の打率.248に関しては、本人も納得していないだろうが、ファンも歯がゆさを感じずにはいられない。私の周囲でも「大島がFAで出て行くのは困るが、平田は出て行ってもいい」という意見が多かったのは、今年の打率があまりにも悪かったからだろう。
 来年こそは、打率、本塁打ともに自己ベストを更新して3割20本塁打を達成して見返してもらいたい。


 A又吉と福谷の先発転向は成功するのか

2016年11月12日

 中日の投手陣でこの冬、まず気になる投手と言えば、又吉克樹と福谷浩司である。
 又福コンビとしてファンに親しまれる2人とも、この2年間は、リリーフで不安定な結果を露呈している。

又吉克樹
 2015年 6勝6敗0セーブ、30ホールド、防御率3.36
 2016年 6勝6敗0セーブ、16ホールド、防御率2.80

福谷浩司
 2015年 3勝4敗19セーブ、4ホールド、防御率4.05
 2016年 1勝2敗8セーブ、8ホールド、防御率4.05

 又吉の場合は、思ったより抑えているのだが、いまいち印象が良くないのは、大事な場面でよく打たれているからだろう。
 2人とも、2014年は素晴らしい成績を残しただけに、この2年間の成績は物足りない。2人の能力からすれば、1点台後半から2点台前半の防御率を記録していてほしいところだ。

 中日も、2016年は、19年ぶりの最下位という屈辱に沈んだため、2017年に浮上するためには、この2年間の失敗を繰り返すわけにはいかない。そのため、又吉と福谷は、揃って先発転向する可能性がある。

 リリーフから先発に転向して成功した投手は増えている。摂津正、山口俊、増井浩俊ら、最初はリリーフとして活躍を見せたが、その後、チーム事情や適性を買われて先発に転向し、活躍を見せている。

 先発で実戦経験を積ませてみないと分からないが、リリーフで不安定になっていても、先発に転向すると安定する場合もある。
 このあたりは、適性や

 ただ、リリーフで投げていた現状の投球スタイルでは、先発として成功するのは難しい。
 又吉も、福谷も、リリーフとしてはパワーピッチャータイプで球威で打者を圧倒するスタイルとなっていたが、先発として成功するには、球威が落ちてくる試合中盤から終盤を抑える技術も必要となる。

 又吉は、鋭く縦に落ちる球がないという課題をクリアせねばならないし、福谷も、緩急をつけるという課題をクリアせねばならない。
 リリーフであれば、直球が走っていれば何とか1イニングなら抑えられるため、球威に頼ってしまいがちではあるが、長いイニングを投げる場合は、球威だけではなかなか0を並べられない。

 変則的なサイドスローで球種が少ない又吉は、リリーフ向きの投手ではあり、私は高津臣吾のような存在になっていくことを期待している。現在、先発転向を視野に入れているが、仮に先発として成功しなくても、先発での実戦経験は、今後に生かせるはずである。

 福谷の場合は、球威とともに多くの球種を駆使できるだけに、緩急をつけてかわす投球術を習得すれば、先発として成功する可能性が高い。長い目で見れば、先発として経験を積み、頭角を現してほしいものである。



 B危険なスライディング禁止に続いて防止策の発展を

2016年11月19日

 今月のセ・パ両リーグの理事会で、2017年から併殺防止の危険なスライディングを禁止する方向となった。
 日本のプロ野球は、大リーグのルールを少し遅れて導入するというやり方を踏襲してきており、今回も、今年から大リーグで導入されたルールを模倣しての導入である。

 大リーグは、昨年に姜正浩とテハダが相次いで危険なスライディングによって故障し、今年から危険なスライディングが禁止となった。
 しかも、併殺阻止を狙う危険なスライディングを行った場合、走者だけでなく打者もアウトになるという厳格さだ。

 この併殺阻止を狙うスライディングは、過去に日本人内野手も被害に遭っている。岩村明憲は、2009年5月に左ひざ前十字靭帯を断裂という大怪我を負い、その後の野球人生に大きく影響した。
 また、西岡剛も、2009年4月に左すね腓骨骨折の大怪我を負って、大リーグで活躍する道を絶たれてしまった。

 そうした経緯を考えると、大リーグの導入も、日本の導入も、遅いくらいと言えなくもない。
 自ら怪我をしたならあきらめがつくが、相手チームの選手からスライディングを受けて故障し、野球人生が狂ってしまうのは、選手本人も、ファンも、納得できない。

 本来なら、危険スライディング禁止に加えて、スライディングされる側の選手にも、すねあて着用を義務付けてほしいところだ。
 野球は、一つ間違えば、選手生命の危機に瀕する競技であるにもかかわらず、選手の装備があまりにも手薄で、故障を招いても仕方ない状況である。
 たとえば、死球によって選手生命を短くしてしまった選手は数多くいるが、その対策が充分とは言えないため、現状も死球による故障は後を絶たない。
 重装備にしてしまうと、可動域の問題が出るため、なかなか踏み切れないのだろうが、選手の野球人生を考慮して、装備も発展させてほしいものである。



 C大谷翔平は王貞治や野茂英雄と並ぶ存在

2016年11月26日

 今年のシーズンオフで一番疑問に思っていたのは、大谷翔平が投手と野手のどちらでベストナインに選出されるのだろうか、であった。
 まさかルールが改正されて両方同時に受賞できるようになっていたとは知らなかった。

 プロ野球草創期ならいざ知らず、現代の野球で投手としても野手としても超一流というプロ野球選手が出てくることは、考えられてこなかった。投手として駄目だったから野手に転向という例は存在しても、投手として成功しながら打者として成功というのは不可能であったはずなのだ。

 大谷も、日本ハム入団当初は数々の批判にさらされてきた。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言があるように、プロ野球の指導者やOBのほとんどが投手か野手のどちらかに絞るべきという意見であった。
 中には落合博満のように、どちらも超一流の素材だから両方やらせるべきという立場をとっていた者もいたが、普通の指導者であったなら片方に絞らせたに違いない。
 大谷にとって幸運だったのは、栗山英樹監督が指揮を執り、育成能力に長けた日本ハムに入団したことだろう。

 プロ野球界も、今回は珍しく迅速なルール改正をしたものだ。大谷にためにせざるを得なかったという事情があるにせよ、野茂英雄の時代から考えれば、かなりの進歩である。

 野茂英雄が大リーグ挑戦を表明したときは、野茂を完全に四面楚歌の状況に追い込み、野茂は、任意引退選手として大リーグに渡った。世論も一斉に野茂を攻撃し、野茂が大リーグで大活躍するとプロ野球界も世論も掌を返した。
 現在では、野茂は、大リーグ挑戦のパイオニアであり、野茂あってのポスティング制度創設となった。野茂がいなければ、イチロー、松井秀喜、松坂大輔、ダルビッシュ、田中将大、前田健太らが世界中で注目される存在になりえなかっただろう。

 こうやってルールを変える存在は、その時代に突出した選手であり、まず思い出すのが、通算本塁打の世界記録を樹立し、内閣に国民栄誉賞を創設させるきっかけを作った王貞治である。
 韓国の至宝と言われた宣銅烈も、プロ入りせずに社会人野球に進み、2年間はプロ入りできないルールだったのを、あまりある才能によって野球界と世論が変更させ、すぐに入団できるようにした。

 逆に、福留孝介は、2006年のオールスターを故障で辞退し、後半戦1試合目から出場して大活躍したため、批判にさらされて、オールスター出場辞退なら後半戦開始後10試合はどうやっても出場できないようにルール改正されることになった。

 このように、突出した選手は、既存のルールを変えるだけの影響力を持つ存在になりえる。
 大谷のベストナイン二刀流受賞は、そんな伝説の1つとして語り継がれることになるだろう。
 来年は、規定投球回、規定打席に到達するようなスケジュールを組めば、投打のタイトルを両方獲得することもできるかもしれない。
 大谷が今後、どんな既成概念を打ち破っていくかは想像もつかないが、今から大リーグでの活躍が楽しみである。






(2016年12月作成)

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