@森新監督に期待したい大砲とエース級の補強
2016年10月01日
中日の新監督は、森繁和ヘッドコーチが務めることになった。
マスコミでは、2軍監督の小笠原道大が有力視されていたので、てっきり森繁和はそのままヘッドコーチ留任と思っていたが、さすがに小笠原に現在の中日を任せるのは酷と判断したのだろう。
80周年を迎えた今年の中日は、リーグ優勝を目指しており、期待した選手が期待通りの働きをしてくれれば、優勝争いをできると思っていた。
ところが、ローテーションで回ってくれるはずの大野、若松、山井が揃って不振に陥り、ネイラー、バルデス、ジョーダンも故障があったり、好不調の波が激しく、先発投手の勝ち頭が7勝という悲惨な成績に終わってしまった。
ここまで揃って成績が悪いと、さすがに先発投手陣だけが悪いわけではなく、リリーフも不安定で、打線も得点力が低いということになる。
パリーグでオープン戦、交流戦、ペナントレースの完全最下位となったオリックスですら西が10勝し、ディクソンが9勝していることから考えても、いかに今年の中日がひどかったかが分かるだろう。
あまりにも惨敗を喫したため、今年のオフは、既存選手の底上げとともに、大幅な選手の入れ替えや補強が行われることだろう。
FA、トレード、ドラフト、外国人選手獲得など、すべての方法で補強を進めたいところだが、森の手腕の見せ所としては、外国人選手獲得が大きなカギを握る。
元々、外国人獲得は、森が独自のルートを築いていて、ドミニカ人を中心に様々な外国人選手を獲得してきている。しかし、今年の結果を見てみると、かなり物足りないのが現状である。
バルデス 6勝7敗、防御率3.51
ジョーダン 6勝6敗、防御率4.24
ネイラー 1勝2敗、防御率4.62
ナニータ 打率.285、8本塁打、35打点
ビシエド 打率.274、22本塁打、68打点
エルナンデス 打率.249、5本塁打、26打点
いずれも、外国人としては物足りない結果が並ぶ。ビシエド以外は、新外国人獲得に動く可能性が高そうである。
今年、ビシエドが不振に陥ったり、故障離脱したときにチームの得点力が大きく落ちて負けが込んだことからも分かるように、1発で試合を決めることができる大砲の存在は重要である。
外野手か三塁手で本塁打を量産できる外国人野手獲得を望みたい。
また、先発として2桁勝てるような外国人投手の獲得も期待したい。広島が独走できた大きな要因として、常に安定した投球で15勝を挙げたジョンソンの存在が大きかった。そういった軸になる存在が1人いれば、現在の戦力でも充分にAクラスに入れるだけに、先発投手の強化が急務である。
来年、Aクラス入りやリーグ優勝を目指すのであれば、現有戦力から抜群の成績を残す選手が現れることを期待するよりは、四番を任せられる大砲とエースを任せられる先発投手を補強して、チームの軸を作ってもらいたいところである。
A大谷翔平の140回から規定投球回を考える
2016年10月08日
今年の日本ハムは、大谷翔平の二刀流がリーグ優勝の原動力となった。投手としての成績も打者としての成績も超一流である。
投手:投球回数140、10勝4敗1ホールド、防御率1.86
打者:打席数382、打率.322、22本塁打、67打点、104安打、7盗塁
リーグ優勝への貢献度としては、2013年の田中将大に匹敵すると言っても過言ではない。
来年は、今年を超える成績を残すかもしれないので、今年の成績で驚いていてはいけないのかもしれないが、もはや世界を見渡してみても比較できる選手がいないのが実情である。
そんな大谷も、今年の投手タイトル、打者タイトルはない。投手タイトルは、最優秀防御率があと3イニング投げれば獲得できていただけに、物議を醸した。
栗山監督も、大谷も、リーグ優勝とコンディション管理を最優先に考え、敢えて最優秀防御率を狙わない方針を貫いた。
栗山監督が言うように、誰かが決めた基準に無理に合わせる必要はない、という考え方には一理ある。
その一方で、タイトルは、獲得できるときに獲得しておくべき、という考え方もあり、ファンの間でも意見が分かれるところだ。
私としては、大谷は規格外の選手なので、規定投球回にとらわれず、大事に使ってほしいという考え方ではあったが、140回投げて規定投球回に到達しないということに対して疑問が残る。
先発投手として勝ちがつく責任投球回は5回であり、分業制が進んだ現在は5回で投球数が100球を超えていたら無失点や1失点でも交代することが少なくない。
しかも、先発投手は、中6日で回すことが多くなっており、週1回の登板で5回投げれば最低ラインと言う考え方をすれば、6試合で5回という規定にしてもいいのではないかと思う。
そうなると規定投球回は、現在の143回から119回に減らすことができる。
日本ハムは、リーグ優勝を果たしながら規定投球回に達したのが有原だけなのだが、仮に規定投球回を119回とするなら大谷とメンドーサも到達していたことになる。
先発投手は、8回、9回と投げることもあれば、1回、2回で降板することもあり、ちょっとした故障で登板を飛ばすこともあるので、なかなか基準が難しいが、さすがに143回という規定投球回は多いと感じる。
B鈴木尚広が惜しまれつつ引退するのはもったいない
2016年10月15日
巨人の鈴木尚広が現役引退を表明したのには驚いた。
鈴木と言えば、盗塁技術にばかり目が行く。外野の守備も、バッティングも巧かったし、本塁へ突入してセーフになる技術にも定評があったが、やはり200盗塁以上での史上最高盗塁成功率.829が圧倒的に印象に残る。
鈴木がトップに立ったことで2位になってしまった広瀬叔功は、通算596盗塁を残し、5年連続盗塁王にも輝いている。そのため、鈴木と広瀬を比較して、鈴木が史上最高の走者だと断定することはできないが、プロ野球史の中で屈指の走者であることは間違いない。
2016年の盗塁数は10で失敗は0、ここ5年間の盗塁成功率は.882である。これだけの成功率があれば、アウト1つ加えることなく高い確率で塁を進められるのだから、これほど重宝すべき選手はいない。
鈴木は、巨人から来年も戦力として考えられていたにも関わらず、本人が自ら引退を決断したという。
選手は、現役でプレーするうちが華である。数多くいる野球人口の中で、ほんの一握りしかなれないプロ野球選手になり、しかも、長年1軍で活躍しながら、その経歴に自ら幕を降ろす。
私には、あまりにも贅沢だと思えるのである。
本人にしか分からない気力の衰え、反射神経や動体視力の衰えは、年齢とともに必ずあるものだが、1軍で活躍している現状がある以上、続けてもらいたかった。
盗塁は、足が速ければできるというものではない。かつて、ロッテが男子100メートルの東京五輪、メキシコ五輪代表だった飯島秀雄を代走専門選手として入団させたことがある。
飯島は、100メートルの手動記録10秒1、電動で10秒34という記録を持ったスプリンターで、入団時には当時のシーズン盗塁記録85を更新するのではないかという期待があった。
しかし、飯島は、入団した1969年が盗塁10、盗塁死8、翌1970年が盗塁12、盗塁死9である。1971年には1盗塁を決めたのみに終わり、通算の盗塁成功率は.575にすぎない。
そういった歴史を見るにつけ、走塁面で鈴木が現役選手でもまだトップクラスの実力を保持しながら、引退してしまったことは、もったいない限りである。
C黒田博樹の引退に違和感がなくなった
2016年10月22日
黒田博樹が現役引退を表明した。
思えばこの2年間のプロ野球は、黒田博樹を中心に動いていたと言っても過言ではない。
2年前の日本球界復帰は、21億円のオファーを蹴って4億円の広島に復帰という常識では考えられない選択であっただけに、あのニュースは衝撃であった。そして、その漢気と、40歳になっても目の前の1試合に人生を賭けて投げる姿に感動を覚えた。
今年は、日米通算200勝と広島を25年ぶりのリーグ優勝に導く活躍を見せ、低迷時代を支えた新井と抱き合って涙する姿にまた感動を覚えた。
ONやイチローのように、突出した存在は、チームの垣根を超えて国民から愛される。
黒田は、この2年間でまさにそのような存在になった。
黒田が通算200勝を挙げる試合を観戦しに来ていた阪神ファンが試合前のインタビューで
「黒田に勝ち星が付くなら負けてもいい」
と答えていた。
実は、その気持ちが私にもあった。私は、中日ファンではあるが、黒田の通算200勝が近づいてきた頃、黒田に勝ち星が付くなら負けてもいいと思っていた。
そのように応援されることを黒田自身は望んでいないだろうが、黒田は、国民にとってそのような存在になってしまったのだ。
今年の黒田を見ていて、もう故障して投げられなくなる前に引退してほしい、と思うようになった。来年も現役を続けたらローテーションを守って投げ、今年と同等の勝ち星を挙げられるだろうが、そこまで無理してほしくないという感情が先走るようになったのだ。
選手に対して、このような感情が芽生えたのは、本当に初めてのことである。
他の選手に対しては、まだまだ現役でできるから辞めてほしくないと思うにも関わらず。
昨年までは、あれほど投げられるうちは現役を続けてほしいと願っていたのに、先日の引退表明を私は、何の抵抗もなく受け入れることができた。
それほど、黒田は、プロ野球ファンが望むものをすべて達成してくれたということなのだろう。
日本シリーズ第3戦は、黒田が先発することが決まっている。プロ野球の最高峰の舞台でエース級として先発する試合が引退試合になるという伝説を私たちは目撃できるのだ。
D日本シリーズは第5戦が最も面白い
2016年10月29日
日本シリーズで最も面白いのは、第5戦だと思う。
思えば、2007年の山井大介が完全試合寸前で岩瀬に交代という衝撃の試合も第5戦であった。
たまに第4戦で決まうシリーズもあるが、第5戦がないと日本シリーズの面白さが半減した気分になる。
今年の日本シリーズは、2勝2敗というプロ野球ファンにとっては最善のペースで第5戦に来た。
第5戦が面白いと私が感じるのは、どの球団も、先発投手を誰にするかで苦労するからである。
第4戦までは先発ローテーションの1番手から4番手を投げさせることが多いので、どの球団もさほど悩むことはないだろう。かつてのように大エースがいて、第1戦、第4戦、第7戦と3度先発で投げる時代は終わった。いくら日本一を決めるシリーズとはいえ、投手人生はその年で終わるわけではないので、長い目で見てリスクを取るようなことはしなくなったのだ。それに、慣れない中3日で回すよりは、公式戦と同じようにきっちり期間を開けて投げた方が好結果を期待できる。
そうなると、第1戦に投げたエースが残り1試合をどこで投げるかが重要になってくる。最近では、中6日空けて第6戦に先発させるというのが主流である。
日本シリーズには移動日が絶妙に2回あるため、エースが第5戦に先発するには中4日、第6戦に先発するには中6日となる。
中5日がない、というところが、日本シリーズの醍醐味である。
その第5戦に広島は、第1戦で先発したジョンソンを持ってきた。一方の日本ハムは、エース大谷ではなく、5番手投手である加藤貴之を持ってきた。
私は、全く逆の予想をしていたので、驚いた。先に2勝して余裕のある広島がヘーゲンズあたりを先発させて、第6戦ジョンソン、第7戦野村を予定するのではないか。日本ハムは、大谷を第5戦に先発させて第7戦でリリーフ待機させると読んでいたのだ。
広島が勝つだろうと見ていた第5戦で日本ハムが勝ち、日本ハムは第6戦でも大谷を先発させず、増井を先発させることになった。
このあたりは、栗山監督の起用が一貫していることに驚かされる。規定投球回を無視した起用といい、今回の第5戦、第6戦先発回避といい、球団の至宝であるとともに日本の至宝でもある大谷を壊してしまわないような最大限の配慮がある。
大谷という特別な存在によって、日本ハムの野球は、歴史上類を見ない特殊な戦い方をしている。
第6戦、第7戦がどんな試合になっていくか、非常に楽しみである。
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