2016年8月のコラム

犬山 翔太
 
 @高校野球女子マネージャーの練習補助は許可しよう

 2016年08月06日

 先月、『それでも龍谷高校は出場してほしかった』の記事の中で、「一般社会には存在しえない連帯責任が学生野球の中に存在している」と書いたら、それは違うという指摘を2ついただいた。

・選挙には連帯責任が存在する
・飲酒運転には連帯責任が存在する

 言われてみれば確かに存在している。選挙の候補者は、個人なので、個人の利益に直結する不正には連帯責任が必要だ。また、飲酒運転も、人命に直結することなので連帯責任はやむをえない。

 私が今まで生きてきた中で連帯責任の大きな被害に遭ったことがないと言うべきであった。自分が伝えたいことを正確に伝えるということは難しい。感情のおもむくままに書いていくと、穴が多い文章になってしまうからだ。ただ、ブログというものは、本来、そういったものでいいのではないかと考えている。ひらめきが新しいものを生み出す力になるのだ。

 時代の流れの中で、過去に多数派であったものが現在には少数派となる場合もあり、現在多数派であるものも未来には少数派になってしまう場合もある。
 「連帯責任は止めるべき」という意見は、現在25%しかなくても、将来、50%を超えて多数派になる可能性もある。多数派の意見が必ずしも正しいとは限らないが、様々な論議の過程で「連帯責任は止めるべき」派が増えていくことを期待したい。

 先日、高校野球の甲子園で女子マネージャーがグラウンドでの練習に参加して制止されてしまった事件も、過去にはおそらく多数派意見であるために書かれた規定なのだ。

 甲子園出場校に配布される「代表校・応援団の手引」の中で「守備練習には練習補助員(男子部員に限る)が5人まで参加できる」という規定が女子生徒の参加を阻害している。
 20世紀終盤までは圧倒的な男性中心社会であったし、女子に対する安全を配慮しているという意見も理解できる。
 
 Yahoo!JAPANの意識調査を見てみると、2016年8月6日時点で「規定を変更し、女子マネージャーの練習補助を認めるべき」が83.4%、「規定を変更する必要はない」が12.5%、「わからない/どちらとも言えない」が4.1%である。
 規定変更派が83%を超えており、時代の流れを見れば、今後も増えていきそうである。
 世間は東京都知事初の女性選出に沸いているが、女性の社会進出、少子高齢化、晩婚化から非婚化、人口の激減と、時代の流れは食い止めることはできない。

 「代表校・応援団の手引」も、「(男子部員に限る)」を削除する対応が必要な時代である。


 A中日の立て直しのために

 2016年08月13日

「黄金時代を支えた名選手たちが一斉に引退することになった今、彼らに代わる選手の補強、育成が急務となる。
 得点力を上げるには、打率よりも年間20本塁打以上打てる打者が2人は必要である。さらに、三塁や遊撃でエラーせず守備範囲の広い選手も必要である。
 投手としては、勝敗で貯金できる先発と、逆転を許さず8回・9回を投げるリリーフ投手が必要である。
 捕手は、まず確実に守れて、リードがしっかりした選手をレギュラーに据えたい。可能であれば、全盛期の阿部や谷繁のように勝負強くて一発も放てる打者であることが望ましい。」

 これは、私が昨年10月に書いたブログである。見てのとおり、2015年シーズン終了時点の中日の課題を拾い上げたものだ。
 そして、2016年のシーズン、中日は、谷繁監督が休養という緊急事態に直面することになった。

 2011年のリーグ優勝以降、ジョイナスによる失速の2年間によって急激な弱体化をしてしまった中日。
 2014年から谷繁が監督に就任したときは、再び常勝軍団が甦ると信じて疑わなかった。
 しかし、結果は残酷である。

 2014年は、成績が上向きになったものの、2015年・2016年と再び低迷することになった。
 すべては、誰が見ても明らかな課題を克服できなかったということに尽きるだろう。

 年間20本塁打以上打てる打者2人は、ビシエドの獲得で1人は解決したものの、もう1人が現れなかった。
 三塁や遊撃でエラーせず守備範囲の広い選手は、堂上直倫が遊撃手として台頭したものの、三塁手は高橋周平が故障したこともあって固定できないままとなった。

 さらに最も重要な勝敗で貯金できる先発が1人も現れてないことである。バルデスとジョーダンが辛うじて1貯金しているが、本来であれば貯金10を稼ぐ投手が1人いて、貯金5を稼ぐ投手が2人いないと、なかなか上位に食い込むことは困難である。

 また、リリーフ投手としては、田島が守護神として台頭し、安定した成績を残しているものの、8回を投げる投手を固定することができなかった。
 捕手についても、打てない桂と、そこそこ打てるがリードが粗い杉山の2人が谷繁に代わる存在にまでなっていない。

 谷繁監督に責任を負わせるのは酷ではあるが、成績を残せなかった以上、責任をとるのは監督の役目でもある。采配面でも、投手を中心とした守りの野球を目指しながら、ぶれてしまったことへの責任がある。

 中日のような資金力ない球団は、投手力と守備力を鍛え上げ、接戦をものにする野球をして勝ち切っていくしかない。
 2010年、2011年の中日は、落合監督の下でそれをやってのけたが、今考えてみると、それは極めて困難なことでもある。
 来季は、誰が監督を務めるかはまだ分からないが、確固としたビジョンを持った人材を監督に据えてほしいものである。


 B岩瀬仁紀の現役続行を望む

 2016年08月20日

 吉田沙保里がついに敗れた。最近は、全盛期の圧倒的な強さではなく、苦しみながら勝つ試合もいくつかあったので、このまま続けていればいつか負ける日が来てしまうことは予想できた。

 リオ五輪の決勝も、20代前半の全盛期であれば、おそらく1ポイントも失わず圧勝していただろう。当時のビデオと比較すれば、やはり衰えというものを感じずにはいられないのだ。
 しかし、それは、頂点を極めたどのスポーツ選手にも言えることで、永久に頂点に君臨し続けることは不可能だ。

 筋力は、トレーニングで維持できたとしても、年齢による動体視力、反射神経、回復力の衰えはどうすることもできない。

 私も、落合博満の全盛期は、このまま三冠王を10回くらい獲得するのではないかと思っていたし、野茂英雄の全盛期には、通算500勝くらいするのではないかと思っていた。
 しかし、年齢による衰えというものが遅かれ早かれすべての選手に必ず訪れることを知ってから、私は、全盛期から下り坂を降りていく選手たちに対して大きな愛情を注ぐようになった。

 現在のプロ野球で私が最も応援している選手が岩瀬仁紀だ。
 もはや説明する必要もない選手で、前人未到の400セーブを達成しているプロ野球史上最高のリリーフ投手である。
 落合監督の8年間常に守護神を務め、常に好成績を残してきた。9回は岩瀬がいるから、投手コーチは8回までの投手起用だけを考えておけばよかった。もちろん、8年間のうち前期は先発で川上憲伸・山本昌、後期は吉見一起・チェンという勝ちが計算できるエース級はいたし、8回を投げる投手も前期は岡本真也、後期は浅尾拓也がいたから、盤石の安定感があった。
 それでも、8年間常に故障せずに抜群の成績を残し続けたのは、岩瀬のみである。落合博満が8年間を総評し「岩瀬仁紀のチーム」と称したのは、岩瀬の功績が最大であったことを証明する。

 しかし、その岩瀬も、ついに2014年に故障してしまい、2015年は1年間を棒に振ってしまう。
 2016年は、肘に負担のかからないフォームを模索したが、結果が出ず、フォームをまた模索しながら復活に向けた調整が続く。

 岩瀬は、2016年8月19日に1軍再登録となったが、もし今後の登板で結果が出せないときは、進退を考えることになるだろう。
 史上最高のリリーフ投手である岩瀬は、山本昌と同じように、自ら引退の時期を決められる。岩瀬が現役続行を表明しても、誰も止める者はいないだろう。

 私は、岩瀬に納得の行くまでもがいてほしいと願う。もし仮に今年結果が出ずとも、来年、新たな岩瀬が見られることを期待する。
 幸い、球威は戻りつつあるので、投げられる状態のうちは、現役でもがき続け、史上最高登板数の更新を目指してもらいたい。


 C5年連続V逸からの脱却のために

 2016年08月27日

 中日が5年連続でリーグ優勝を逃した。7年前と6年前に連覇したチームが5年前からは首位に10ゲーム差以上をつけており、リーグ優勝どころの話ではない。
 ここ4年間は、Aクラスにも入れておらず、黄金時代から一気に暗黒時代に入ってしまった感がある。

 中日は、戦後、世代交代や弱体化をうまく乗り切ってきたチームである。これまで連続Bクラスは3年が最高で、4年連続Bクラスはこれまで1度もなかった。

 それは、新聞社が1990年代までは安定した産業であったことが挙げられる。テレビ、ラジオと並んで新聞は、人々の生活に不可欠な存在であったからだ。それゆえに、プロ野球にも資金を投入して大型補強をすることが可能であった。

 しかし、2000年代以降、その構図は大きく崩れた。インターネットの普及、スマホの普及は、人々の新聞離れを進めることになり、テレビ自体に番組欄やその情報が掲載されることになって新聞が必要不可欠な存在でなくなった。中日新聞だけでなく、すべての新聞が地盤沈下を起こす中、中日は、資金を抑えながらチーム作りをしなければならない苦境に陥ることになった。
 その一方で、プロ野球界にもIT化の波は訪れ、ソフトバンク、楽天、DeNAと新たな産業を軸にしたチームが台頭してきた。

 そういったチームに対抗するには、自前の選手を鍛え上げて強くする、安い外国人選手を発掘して育てる、といった育成が欠かせないのだが、機能させるのは並大抵のことではない。

 これまでは下位に沈んでも補強によって、乗り越えてきた歴史を見てきた私にとっては、今回もそれを望んでしまうのだが、時代の流れには逆らえず、大型補強実現は厳しそうである。

 皮肉なことに、劣る資金力のせいで長年低迷していた広島が25年ぶりの優勝に向けて順調な道を歩んでいる。
 中日も、目指すのは広島のようなチーム作りとなるだろう。一度出て行った名選手が凱旋して戻ってくるような魅力的なチームへと変貌を遂げてほしいものである。





(2016年9月作成)

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