2016年4月のコラム

犬山 翔太
 
 @ローテーションの再編が必要な中日

2016年04月03日

 プロ野球が開幕して1週間が過ぎ、開幕前の構想が大きく狂っているのは中日である。
 投手を中心とした守りの野球を目指す中日にとって、セリーグワーストの防御率は、想定外だったにちがいない。

 先発投手が8試合連続で先制点を許すという苦しい試合展開に終始し、先発投手陣の不振が目についた。
 打線は、4番ビシエドという核ができたことによって、昨年よりも得点力が上がりそうであり、高橋周平もついに覚醒しそうな勢いである。
 遠藤か堂上が遊撃手として定着してくれれば、将来が楽しみな野手陣になるはずである。

 問題の先発陣は、大野・山井・若松・ネイラー・濱田・福というローテーションを組もうとしたが、山井・濱田・福の3人がなかなか機能しなさそうだ。
 今後、吉見、ジョーダン、小熊、雄太、岩田らを試していくことになるだろうが、彼らがどれだけの成績を残してくれるかによって、中日の今シーズンが決まってくる。

 昨年は、吉見を寒い秋田で投げさせたことが響き、途中離脱ということになってしまったので、吉見は、春先はドーム球場限定で起用すべきだろう。
 そうすると、ローテーションは、変則的にせざるをえず、残り2人のローテーションをどうしていくかが重要になる。

 大野・若松・ネイラーに次ぐ先発候補としてはジョーダンがまず有力だが、残りの1人が苦労しそうである。
 山井が復調すればそれが最善ではあるが、昨年の4勝12敗という成績と今年38歳を迎えるという年齢を見ても分かるように、年々衰えていく球威をカバーするのは困難である。
 幸い山井は、中継ぎでも適性を見せており、ロングリリーフができる中継ぎとしての活躍を期待したい。

 今年は、2軍の投手陣、野手陣も好調で、選手層の厚さを感じることができる。1軍の先発ローテーションが確立できれば、落合GM・谷繁監督が構想する戦いが実現できる。
 それだけに第4、第5の先発投手確率が急務である。


 Aまずはチャレンジ制度を導入しよう

2016年04月10日

 珍しい判定訂正が起きた。
 2016年4月9日の阪神×広島戦で2-2の9回1死2塁から松山竜平の放った右中間の打球に福留孝介がダイビングキャッチした。
 1塁塁審がフェアの判定をしたものの、福留と金本監督の抗議によって再度審判団が協議した結果、キャッチしていたことが確認できてアウトとなった。

 実際に映像を見ていても明らかに福留がキャッチしていることが分かるし、2塁ランナーもスタートしていなかったため、1塁塁審の判定に問題があったことは確かだが、立ち位置の関係で福留がキャッチした場面が見えなかったにもかかわらず、判定したことが問題を大きくしてしまった。
 松山が放った打球は右中間の浅いところに飛んでおり、福留が追いついてきたことから考えると、2塁塁審が最初から判定するのが妥当な打球であったように思われる。

 キャッチした場面が1塁塁審から見えなかった場合、即座に2塁塁審が判定するという仕組みを確立しておけば起きなかった誤審ではあるが、プレーの流れの中で、それをスムーズにできるかといえばそうではないため、やはりチャレンジ制度の導入が必要である。

 大リーグでは2014年からチャレンジ制度が導入されて、誤審を減らすという効果が表れてきている。
 日本プロ野球も、大抵の制度は大リーグに追随してきただけに、そのうち導入されるものと思っていたが、現在のところ導入されていないため、誤審が頻発する事態が解消できていない。

 日本ではあらゆる角度からプレーを判定できるビデオの設置が地方球場では整備できていないため、球場によって精度に大きな差が出てしまう可能性がある。それがチャレンジ制度導入の1つの障壁となっている感があるが、それでも最善を尽くすということであれば、早期にチャレンジ制度を導入すべきである。

 今回は、福留と金本監督が激しく抗議し、他の審判員の見解がアウト判定だったことで、判定が覆ったが、他の審判員のうち1人でもフェアの見解だった場合、覆らないことが想定される。

 今回の場合、阪神側の抗議とそれに続く審判団の協議によって、かなり時間がたってから判定が覆ったことで、逆に広島の緒方監督が抗議をするという事態となり、後味が悪くなってしまった。

 誤審を減らすためだけでなく、こうした後味の悪さを解消するためにも、まずはチャレンジ制度を導入してほしいものである。


 B何とか秋に熊本・鹿児島で代替試合を

2016年04月17日

 2016年4月19日に熊本の藤崎台県営野球場、4月20日に鹿児島の県立鴨池野球場で予定されていた巨人×中日戦が中止となった。

 熊本で起きた大震災の状況を見ていると、とても野球をできる環境ではないため、中止の決定は妥当である。特に熊本城に隣接する藤崎台県営野球場は、熊本城の石垣や櫓が崩れ、天守閣の鯱や瓦が落ちた惨状を見れば、選手や観客の安全を保障することができないのは明白だ。
 球場もスコアボードにひびが入り、証明が落下し、内野席が壊れ、外野が隆起しているという。
 それに、熊本のファンも、今は野球を見ている場合ではなく、目の前の生活を元に戻すことを最優先しなければならない。

 鹿児島も、用具の搬送が困難となってしまったようで、試合中止はやむを得ない状況である。

 娯楽は、人々の生活が平穏であってこそ楽しむことができる。
 今回のような大震災が起きると、スポーツや音楽、お笑いといった普段人々の心を潤してくれるものが途端に無力に感じられる。それは、人々の生活にとって必要不可欠なものでは無いからだ。

 だが、必要不可欠ではないとはいえ、仮になかったとしたら、人々の生活は何の楽しみもなく、味気ないものとなってしまう。
 我々は、単調な日々の生活の中で、好きなスポーツチームや選手の活躍に酔いしれ、一喜一憂しながら日常を忘れて活力を取り戻す。そして、音楽で心に癒しや高揚を求め、お笑いで嫌なことを吹き飛ばしていく。

 大震災が起きた時点ではスポーツや音楽、お笑いなどが無力であったとしても、復興に向かい始めたとき、人々はそれらを求めるはずである。

 阪神大震災が起きた1995年には前年に台頭したイチローが首位打者、打点王、最多安打、盗塁王を獲得する素晴らしい活躍でチームを牽引し、シーズンMVPに輝くとともに、オリックスをリーグ優勝に導いた。復興に向かう人々の生活に活力を与え、希望の光を示して見せた功績は甚大だった。

 東日本大震災が起きたときも、楽天はその年こそ優勝できなかったが、2年後の2013年には田中将大が24勝0敗という信じがたい成績を残して最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞などを獲得し、シーズンMVPに選出される活躍でリーグ優勝と日本一を達成した。まだまだ復興途上である東北のシンボルとなってくれた。

 熊本は、これから復興に向けた長い道のりを歩まなければならないが、その途中で野球が求められる役割は大きい。
 秋ごろには、徐々に復興に向けた歩みが進んでいるはずなので、ぜひとも秋には熊本・鹿児島で代替試合を開催して、人々に活力を与えてほしいと願う。


 C中日は守護神を誰にするのか

2016年04月24日

 守護神という役割は、過酷である。最も抑えるのが困難な9回を任され、勝っているときは毎日のように緊迫した場面で投げなければならない。
 守護神は、3年程度が寿命と言われるのは、それだけ体を酷使してしまうからに他ならない。その球団も、3年に1度は、新たな守護神を考えなければならないのだ。

 その点、2004年から2013年までの中日は、極めて恵まれた状況にあったと言わざるを得ない。岩瀬を守護神に起用した落合博満の英断が中日の黄金時代を作り上げ、10年間にわたって誰を守護神にするか悩まずに済んだからである。

「岩瀬で負けたら仕方ない」
 落合博満は、監督時代、岩瀬が打たれて負けてしまうと、そうかばい続けた。かばうと言っても、1年のうちで失敗するのは2、3回程度なので、むしろそう答えるのが当然ではあった。
 400セーブ以上を上げた日本人投手は、岩瀬以外におらず、岩瀬が史上最高のリリーフ投手であることは実績からも明らかだ。

 そんな中日が守護神を誰にするかを考えなければならなくなったのは、2014年半ばに岩瀬が故障してからである。
 特に2015年は、岩瀬不在に苦しんだ1年となった。守護神を固定できず、守護神を任せようとした福谷は、不安定な投球で大きく成績を落とした。

 2016年も、岩瀬が戻ってきたものの、1年以上実戦登板から遠ざかっていたせいで、まだ本来の球の切れやコントロールが戻ってきていない。
 しかし、現状では四球からすぐ崩れる危険がある福谷や田島、又吉、岡田といった投手を守護神に固定することも難しい。四球から崩れる可能性の最も少ない岩瀬を守護神に据えることが最善と考えられる。

 しかし、岩瀬も既に41歳であり、1年を通してかつてのような活躍ができるかどうかは疑問が残る。
 最近では44歳までリリーフとして超一流の成績を残し続けた斎藤隆や48歳になるシーズンに先発で5勝を挙げた山本昌など、40代に入っても活躍する投手が増えてきたため、岩瀬もまだまだ活躍できる可能性はある。

 それでも、岩瀬が永遠に現役を続けることはできないので、若い投手に経験を積ませるためにも、若い投手を岩瀬とダブルストッパーで起用して育てていくのが最善の方策であろう。
 個人的には、まだまだ岩瀬が年間30セーブ以上を挙げる姿を見てみたい。






(2016年5月作成)

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