@今年のセリーグの成績は不思議である
2015年08月02日
今年のセリーグの順位は不思議である。
7月末現在、得失点差が−77で6位の阪神が首位を走っている。得失点差+41で1位の広島が4位である。
それだけではない。チーム打率3位、チーム防御率3位の中日が5位と4ゲーム差をつけられての最下位である。
たいていのシーズンはチーム防御率の順に成績が並ぶものであり、本来であれば、巨人、広島、中日、ヤクルト、阪神、DeNAと並ぶはずである。
ところが現実は、阪神、巨人、ヤクルト、広島、DeNA、中日の順だ。ほぼ妥当と言える順位にいるのがヤクルトとDeNAだけなのだ。
セリーグの順位を見ていてどうしても目が行ってしまうのは、阪神と広島、中日である。
チームの得点、失点、本塁打、盗塁、打率、防御率の一覧を見ていて、阪神が中日を上回っているのは、わずか2本差で本塁打数が多いことだけである。
最近の中日は、ファンの間で大砲不在を嘆く意見が数多く上がっているが、それでも首位阪神とは本塁打数が2本差なのである。
そして、チームの得点、失点、本塁打、盗塁、打率、防御率の中で、阪神が広島を上回っている項目はない。もっと細かく項目を見ていくと、四死球の多さや失策の少なさ、奪三振数は上回っているのだが、それでも得失点差に大きく影響しているわけではない。
それでこれだけの差が出てくるというのは、次のような理由が考えられる。
阪神が僅差で勝つ試合が多く、僅差で負ける試合が少ない。大差で勝つ試合が少なく、大差で負ける試合が多い。
中日・広島が僅差で負ける試合が多く、僅差で勝つ試合が少ない。大差で勝つ試合が多く、大差で負ける試合が少ない。
かつて、落合監督がいた中日は、ナゴヤドームで僅差の試合をことごとく勝利し、ビジターで大差をつけられた試合は、打たれた先発投手を100球前後まで引っ張り、捨て試合を作って、救援投手陣の負担を軽減していた。それゆえに、他球団に劣る戦力でもリーグ優勝を果たすことが可能だったのである。
現在の状況を端的に言えば、阪神は上手い試合運びをやっていて、中日・広島は下手な試合運びをやっているということになる。厳しい状況に置かれた時の精神面の強さ、弱さが結果を分けているとも考えられる。
ただ、それがシーズン最終盤まで続くかどうかと言われると、疑問符が付く。阪神はどこかでつまづくこともあるだろうし、広島・中日もこのまま上位との差が広がる一方とはいかないだろう。
広島・中日には、大型の連勝をしてもらって、セリーグを面白くしてもらいたいものである。
A日本の独立リーグから外国人選手を獲得するという発想
2015年08月09日
プロ野球のペナントレースも、終盤に入ってきた。セリーグの場合、開幕当初に描いた青写真どおりに来ている球団はなく、首位でも貯金わずか3という状況である。
中でも最も青写真に反する結果が出ているのは中日である。中日は、シーズン前の下馬評では最下位予想が多かったものの、投手陣が安定していることもあって、私は、優勝争いできると考えていた。
ところが、シーズン序盤からリリーフの又吉・福谷が不調に陥り、浅尾が故障する。さらに、吉見・バルデスも、故障で離脱していき、山井も、昨年の安定感抜群の投球が嘘のように不安定さを露呈している。
また、守り勝つ野球を目指しながらも、失策数は12球団最多であり、本塁打を量産できる長距離砲がいないこともあって得点力も低い。
投攻守にわたって状態が上向かないだけに、これ以上の後退を避けるためにも、対策が必要なのだ。
そこで出てきたのが日本の独立リーグから外国人選手を獲得するという発想である。
日本の独立リーグからは、既にオリックスのマエストリ、カラバイヨ、ヤクルトのデニングなどが活躍しているため、今後、日本の独立リーグは、プロ野球への登竜門として外国人選手に注目される存在となりそうである。
中日が獲得したネイラーは、四国アイランドリーグplusの香川に今年から入団した投手であり、大リーグでの経験はない。
大リーグの基準からすれば、飛び抜けた速球があるわけでもなく、球種も多くないということで、アメリカでは目立たない存在だったのだろう。
とはいえ、2010年には2Aで12勝を挙げた実績もあり、コントロールを乱して崩れる投手ではないだけに、日本のプロ野球に適応する可能性を秘めている。
ネイラーが終盤戦の柱となるような活躍をすれば、大野・若松・吉見・雄太・ネイラー・山井・山本昌と先発ローテーションが安定して、中日が上がっていくこともありえる。
中日は、落合が監督だった頃もそうだったのだが、落合がGMになってからはさらなる緊縮財政をとっており、大リーガーを補強することをやめている。高額契約は、高い利益をもたらしてくれる可能性もあるが、全くの捨て金になる可能性もある。まさにハイリスク・ハイリターンだけに、中日は、ローリスクの方針を貫いている。ローリスクは、ノーリターンの確率も高いのだが、時おりミドルリターンやハイリターンを生んでくれる。落合が監督時代に獲得したブランコは、二冠王も獲得したことからハイリターンだったと言ってもいいだろう。
この2年間で、格安ドミニカ人選手や育成切れ選手、トライアウト選手を獲得して、それなりの効果を上げている。
8月7日のネイラー初勝利の投球内容を見ていると、今後の活躍もかなり期待できる。日本の独立リーグから外国人選手獲得という一手がセリーグの終盤戦を面白くしてくれそうな予感である。
B二段モーション・ストップモーションはいつ指摘すべきなのか
2015年08月16日
高校野球の夏の甲子園で二段モーションが話題になった。専大松戸の原投手が審判から二段モーションという注意を何度も受け、自らの投球リズムを乱して敗れたからだ。
注意をするのなら試合後で良かったのではないかとの指摘が多く、実際にはそれまでの大会では注意してこなかったわけなので、試合中の指摘は不適切だったというべきだろう。
二段モーションは、かつて三浦大輔投手、岩隈久志投手、藤川球児投手が採用していた投法で、投球動作の途中で一度足を上げてから下げてためを作り、もう一度上げて踏み出す動きである。
打者のタイミングをずらす効果が大きいため、プロでも多くの投手が取り入れていた。
公認野球規則では、二段モーションを禁止するという内容はなく、全身が静止するストップモーションを禁止している。
そのため、二段モーションでも海外では何ら問題とされない場合もあるのだが、一度下げた足を再度挙げるときに、少しでも動きが止まってしまえばボークと判定される危険がつきまとう。
日本では野球の国際化に対応するため、プロ野球で2006年から二段モーションを禁止する規制強化を打ち出した。
今、振り返ってみると、二段モーションそのものを禁止するのではなく、厳密にストップモーションを禁止すべきだったのではと思わないでもないが、疑わしき動作はしない方がいいという判断だったのだろう。
確かに、国際大会の重要局面でボークをとられてしまうと、勝敗に直結する場合もあり、そんなリスクはあらかじめ排除しておいた方が安全ではある。
上記で挙げた選手は、二段モーションをやめてからも、素晴らしい成績を残し続けたため、二段モーションを禁止した影響が表面化してくることはなかった。
それでも、2006年の禁止から時間がたったせいか、二段モーションやストップモーションを疑ってしまうような投球フォームの投手がまた増えてきている。
私が先日見ていて、これはと思ったのがヤクルトの石山泰稚投手である。専大松戸の原投手よりもさらに、二段モーション・ストップモーションの疑惑を感じてしまう投法なのである。
ヤクルトには小川泰弘投手というノーラン・ライアンに似た投げ方をする投手がいて、彼も二段モーション・ストップモーションの疑惑がつきまとっている。
疑惑があるということは、いつ国際大会でボークを取られてもおかしくないという意味でもあり、やはり今後改善が必要と考えるべきだ。
とはいえ、試合中に指摘を受けて即座にフォームを変えるのは困難である。国内の試合であれば、試合中に指摘するのは適切ではなく、プロ野球であればシーズン前に、アマチュア野球であれば大会前・大会後に注意をすべきだろう。
C方向転換が1か月遅かった中日
2015年08月23日 15:26
ペナントレースも佳境に入ってきた。パリーグは、ソフトバンクが抜けだした感があるものの、セリーグはまだ先が見えない。あと1か月程度でリーグ優勝の行方が見えてくるはずである。
私がシーズン当初に想定していた中日と阪神が優勝争いをする構図が崩れてしまったのは想定外であった。
評論家の多くが中日の低迷を予想していたが、そこからいまだ抜け出せないでいるのは歯がゆい。
中日がシーズン当初に首位を走った勢いがなくなった理由は、1つではない。最も大きかったのが又吉、福谷、山井の不調と、吉見、浅尾の離脱である。
昨年活躍した又吉、福谷、山井は、多少の反動すらあれ、昨年に近い成績を残してくれると踏んでいただけに、今年の成績は、想定以上の悪さと言わざるをえない。
2014年成績
又吉:9勝1敗2セーブ24ホールド、防御率2.21
福谷:2勝4敗11セーブ32ホールド、防御率1.81
山井:13勝5敗、防御率3.21
2015年成績(8/22現在)
又吉:5勝5敗0セーブ23ホールド、防御率3.43
福谷:3勝4敗19セーブ4ホールド、防御率4.05
山井:4勝10敗0セーブ3ホールド、防御率3.97
3人とも昨年とは比較にならないほど成績を落としている。山井は先発でわずか3勝しかできず、中継ぎに回ってようやく本来の力を発揮し始めたところである。
中日の低迷は、この3人にこだわり過ぎたことだろう。本来ならば6月くらいに見切りを付けてもいいくらいの成績だったにもかかわらず、7月、8月まで引っ張ってしまった。
そのため、シーズン終盤にベストメンバーを揃えて勝負をかける状況に持っていくまでに、沈んでしまったわけである。
特に又吉、福谷の不振は、シーズン序盤に先発ローテーションで回っていたバルデスの勝ちを幾度となく消してしまった。バルデスは、防御率3.34で3勝8敗だが、本来ならば8勝くらいしていてもおかしくない成績である。
中日が8月後半になってようやく6連勝でチーム状態を立て直しつつあるのは、又吉・福谷を降格させ、山井を中継ぎに回したところが大きい。
それとともに、先発投手陣の一角としてネイラーを獲得し、吉見、浅尾がようやく故障から復帰したところも大きい。
岩瀬の故障がここまで長引くことも想定外ではあったが、田島が何とか穴を埋めてくれそうである。
現在のチーム体制にあと1か月早く方向転換していれば、と悔やまれるところではあるが、セリーグではどのチームも優勝の決め手がないだけに、優勝の可能性がある以上、あきらめずに戦ってほしいものである。
Dペナントレースを面白くするには、戦力を均衡させることだ
2015年08月30日 12:34
この週末が終わると、いよいよ勝負の9月となる。
8月28日時点で、首位ソフトバンクと2位日本ハムの差が8.5ゲームあるパリーグ。逆にセリーグは、首位阪神から最下位DeNAまでが9.5ゲーム差にひしめいている。
どちらのリーグが面白いか。もはや言うまでもないだろう。
セリーグは、9月に阪神が失速すれば、優勝争いでかなりの激闘が見られそうである。
現在のセリーグの成績を見ていて思い浮かべるのが1994年のセリーグだ。私が今まで見てきた中で、最も興奮したペナントレースである。
1994年のセリーグは、巨人が前半戦に首位を独走したものの、後半戦に入って失速し、巨人と中日が69勝60敗の首位で並び、直接対決となる10月8日の最終試合で勝った方がリーグ優勝という最高の状況が出来上がった。
巨人の長嶋茂雄監督が「国民的行事」と評し、槙原・斎藤・桑田の3本柱を投入した巨人が中日を6−3で破ってリーグ優勝を果たした。テレビ視聴率が史上最高という伝説の10.8決戦として現在でも有名である。
中日ファンだった私は、あの年、落合の巨人移籍があったため、中日と巨人の両方を応援していた。その両球団が最終戦でリーグ優勝をかけて激突するというのは、まさに夢の試合であった。
そして、あの年のセリーグが面白かったもう1つの理由こそ、シーズン終了時に優勝した巨人から最下位の横浜までわずか9ゲームしかなかったことである。
こういった僅差になるのは、飛び抜けたチームも、圧倒的に弱いチームもない場合である。
ドラフト制度開始以降、戦力の均衡が図られるようになったとはいえ、なかなか首位から最下位まで僅差というのは少ない。それだけに、僅差で6球団がひしめき合うと歴史に残るシーズンとなるのだ。
たとえば、巨人が最後のV9を達成した1973年は、巨人・阪神・中日が最後まで激しい優勝争いを繰り広げた。
V9を達成する巨人も、この頃になるとメンバーに衰えが見えてきており、他球団との戦力差が小さくなっていた。結局、終わってみれば、首位巨人と2位阪神のゲーム差が0.5だったのをはじめ、3位中日も2位と1ゲーム差で続き、最下位の広島も、首位と6.5ゲーム差だったのである。
今年も、3連覇した巨人の戦力に衰えが見えてきており、圧倒的な強さでリーグ制覇を達成することが困難な状況である。
となると、場合によっては、1973年や1994年に匹敵するような結末になる可能性がある。
また最終戦でリーグ優勝が決まるような国民的行事が生まれることを期待したい。
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