2015年4月のブログ

犬山 翔太
 
2015年04月01日

 @福田永将には持ち味の豪快さを貫いてもらいたい

 今年のオープン戦で最も台頭が著しかった打者と言えば、福田永将になる。
 打率.483、4本塁打、13打点という圧倒的な数字をたたき出している。落合GM復帰後の指導体制で、打撃フォーム固めを行ってきたが、それが1年間かけてようやく実を結びそうな気配である。

 福田が台頭してきたのは中日にとっては嬉しい誤算だが、セリーグはDHがないだけに、打撃が開眼してもすぐにレギュラーというわけにはいかない。福田が守れるのは一塁と三塁だが、そこには球界を代表する打者である森野とルナがいるため、なかなかレギュラーを獲得するのは難しい。
 森野の一塁守備はゴールデングラブ賞を獲得したほど、非の打ちどころがなく、ルナの三塁守備も肩とスナップの強さが日本人離れしており、捕ったら安心してみていられるほどである。

 昨年、打撃だけならミートの巧さに定評のあった中田亮二が2軍ではいい成績を残しながらも戦力外になってしまったことからも、強打者が務める一塁、三塁のレギュラー獲得の困難さが読み取れる。
 ならば外野手でという選択肢もあるだろうが、福田自身が守備を得意としていないだけに、やはり1塁でなければレギュラー獲得は厳しい。

 そんなときに森野が骨折で長期欠場を余儀なくされ、福田にチャンスが回ってきた。
 しばらくはレギュラーで起用されることが濃厚となったため、森野が戻ってくるまでの間にどれだけの成績を残せるかが福田の野球人生の分水嶺になるはずである。

 福田は、高校通算49本塁打を放ち、背番号55をもらってスラッガーとなる素質を期待された入団してきた大型内野手である。なかなか1軍では結果を出せないでいたが、地道に力を付けてきていたようだ。高校から入っただけにまだ26歳と若い。
 今、レギュラーを獲得したとしても、あと10年は充分に活躍できるはずである。ぜひ、中日が目指す日本人の右の四番打者に成長してもらいたいものだ。

 福田には、2ストライクをとられるまでは常に一発を狙うような豪快な打撃を貫いてほしい。今後、相手チームに研究されて、打てなくなる時期が来るかもしれないが、福田最大の持ち味は消さず、おかわり君のようなスラッガーに成長してほしい。
 相手に大きな脅威を与えられるスラッガーがチームに1人は必要である。
 落合監督の下ではタイロン・ウッズやトニ・ブランコがいた。そういうレベルの打者になれば、存在そのものが味方チームに活力を与え、相手チームは恐怖感が増す。1人でありながら2人分、3人分の効果を上げることもでき、その波及効果は絶大なものとなる。

 私には福田に関する好きなエピソードが1つある。落合GMが監督時代に残したものだ。
 キャンプ中に少年が落合監督の元へサインをもらいにやってきた。しかし、少年が差し出した色紙には既に誰かのサインが書いてある。よく見てみるとそれは、福田のサインだった。
 落合は、それが分かると、自らはサインせずに少年に返した。
「このサインは、そのまま持っていなさい。将来すごく価値が出てくるから」
 その価値が出てくるのが今年であることを大いに期待しておきたい。


2015年04月04日

 Aトライアウトで八木獲得を即決した落合GMの眼力

 八木智哉の気迫あふれる投球は、どうしてもあのときを思い出さずにいられなかった。
 2006年日本シリーズ第2戦である。
 あの日を1勝0敗で迎えた中日は、好調の山本昌を先発に立てて2連勝を目論んでいた。
 そして、日本ハムが先発させたのは新人でありながらシーズン12勝を挙げた八木だった。
 八木は、1回裏に井端のソロ本塁打で1点を失い、さらには4回裏に福留のソロ本塁打で1−2とリードを許す。
 しかし、6回4安打2失点の好投で7回の逆転劇を呼び込み、5−2で勝利投手となったのだ。

 ナゴヤドームで勝利を得て勢いに乗った日本ハムは、札幌ドームで3連勝して一気に日本一を決める。思えば、第2戦での八木の好投が日本シリーズの流れを引き寄せ、そこから4連勝で一気に日本ハムが日本一を決めるきっかけとなった。
 もし八木の好投がなければ、あの日本シリーズは、下馬評が高かった中日が日本一になっていたのではないかとさえ思える。

 今日の試合も、まさに下馬評は、昨年までヤンキースのエースだった黒田博樹を先発に立てた広島だった。
 中日が勝つには1−0といった1点勝負を守り切って勝つしかないはずだった。

 中日は、意外にも唯一とも言えるチャンスをものにして3点を奪ったが、それを引き出したのは、7回を4安打無失点に抑えた八木の好投である。
 あの日本シリーズで見た姿が今日、同じナゴヤドームで重なって見えた。

 オリックスを戦力外になりながら、トライアウトで獲得を即決した落合GMの眼力に感謝である。昨年、八木が残したウエスタンリーグでの投手成績を見てみると、6勝1敗1セーブ、防御率1.97という圧倒的な成績であり、なぜオリックスが放出したかが謎に思えるほどだ。
 まだ32歳と若いだけに、これから進化を続けてエース級として活躍を続けられる可能性を秘めている。また1人楽しみな選手が出現して、今年の中日の野球は面白くなってきた。


2015年04月11日

 Bアラナンデスとカメナンデス

 中日の二遊間がここ数年になく活性化を生んでいる。ソフトバンクの育成選手だった亀澤恭平が加入し、昨年はシーズン前半を不調にあえいだエルナンデスが好調だからである。

 中日の二遊間と言えば、落合監督時代は荒木・井端のアライバが不動の二遊間だった。2010年、2011年は、荒木をショート、井端をセカンドにコンバートする大胆な入替でセリーグ二連覇を達成した。

 しかし、故障がちになってきたブランコや井端の後継者育成が表面化していた当時、落合監督は、さらにレベルアップした野球をするための構想を練っていた。
 落合監督が2012年用として準備していたのは、サード井端、ショート外国人、セカンド荒木、ファースト森野という布陣だった。
 しかし、その構想は、あの忌まわしきフロントの陰謀によって、落合監督が退任をよぎなくされたため、実現しなかった。その後の体たらくぶりは、周知の事実のとおり、ジョイナス政権の2年間で弱体化の一途をたどるという残念な結果を生んでしまった。

 仮に落合監督が続投してサード井端、ショート外国人、セカンド荒木、ファースト森野が実現していたなら、巨人が2012年から三連覇するような事態は起こらなかったはずだ。

 現実は、サードで獲得したルナが打撃で大活躍を見せ、ショートに外国人を起用する構想を実現させることによって、井端があふれ出てしまうという結末を生んでしまった。落合政権最大の貢献者である井端がジョイナス政権の中でショートを熱望したあまり、ジョイナス政権による最大の被害者になってしまうという悲劇が起こった。

 2014年は、落合GMが復帰したことでサードがルナ、ショートがエルナンデス、セカンド荒木、ファースト森野という布陣で挑んだものの、エルナンデスが不調にあえいだ末に故障し、理想の形を築けなかった。

 2015年も、開幕早々にファースト森野が故障するという事態に見舞われたものの、ファーストに福田永将が台頭し、サードでも高橋周平が台頭してきたことによって、左投手と右投手でスタメン起用を使い分ける体制になりつつある。

 たとえば左投手ならサードがルナ、ショートがエルナンデス、セカンド荒木、ファースト福田、右投手ならサードが高橋、ショートがエルナンデス、セカンド亀澤、ファーストがルナといった布陣である。エルナンデスは、スイッチヒッターなので左右の投手に関わりなく起用できるため、使い勝手がいい。

 これからシーズン後半に向けてレギュラーメンバーを固めていくのか、シーズン終盤までこの形でいくのかは興味深いが、森野が戻ってきたとしても、二遊間のレギュラー争いは、エルナンデス、亀澤、荒木の3人になってくる可能性が高い。

 エルナンデスの肩の強さは超一級品であるため、エルナンデスが今後もショートで固定されるとなると、やはりセカンドがどうなっていくかである。
 亀澤は、左打者でミートがうまく、俊足で、守備範囲も広いということもあって、総合力では既に荒木に匹敵するほどの実力を持ち合わせていると言っても過言ではない。

 ここ1番での守備判断や走塁のセンスにおいては荒木が卓越しているため、現時点では重要局面では荒木を起用することになるだろうが、亀澤が左投手でも起用されるようなセカンドになれるかどうかが今後の中日の浮沈のカギを握っている。

 現時点では、左投手ならアラナンデス、右投手ならカメナンデスの二遊間がベストである。
 今後、シーズン終盤に向けて、どのように変わっていくのか、そのまま変わらずにいくのか注目していきたい。



2015年04月18日

 C吉見一起の中10日先発の意義

 シーズン前、吉見一起が中10日で登板する案があることは知っていたが、まさか本当に実行するとは予想外であった。吉見ほどの投手であれば、先発できるならば、通常の先発ローテーションに組み込みたい投手だからである。

 吉見は、2013年6月4日にトミー・ジョン手術を受けた。復帰まで1年かかる手術と言われており、吉見は、2014年夏に一度は復帰したものの、違和感を覚えて離脱したため、3試合のみの登板となった。

 無理はさせられない状態であることは明らかなのだが、私は、中6日での先発ローテーションに組み込むと想定していた。それは、かつて村田兆治がトミー・ジョン手術を受けて復帰後、中6日の先発で見事な復活を果たて名球会入りした印象が強いからである。そして、それが成功の前例となって、一般的になった感もある。
 ダルビッシュが昨年、大リーグの中4日先発制に対して、短すぎると異議を唱え、中6日が理想という意見を表明したように、先発した投手が肘や肩に抱えた炎症から回復するためには、ある程度の期間が必要である。

 念には念を入れて、という意味を込めて、中10日という選択にしたのだろう。必ずしも10日にこだわる必要はないのだが、登録抹消をしてから再登録するまで10日間必要であり、その間に他の投手を1軍で起用して無駄を極限まで省くには、中10日が理想なのである。こうした思い切ったローテーションには、やはり落合GMと森ヘッドの意向が働いていると推察できる。

 そのうえで、過去2年間で1勝の吉見をここまで特別扱いすることは、かつての吉見を知らなければ不可解に見えるはずだ。
 吉見は、ローテーション入りした2008年から故障前年の2012年まで5年間で69勝26敗の成績を残している。これは、1年間あたりに換算すると14勝5敗の成績となる。
 毎年安定してこれだけの成績を残せる投手は、現在のプロ野球界で探したとしても、ほんの数人程度である。
 吉見は、通常のローテーションを崩してでも、大事に起用する価値のある投手なのだ。

 今後、中日がシーズン終盤まで優勝争いをした場合、吉見がどこでこの中10日登板を短縮してくるかが非常に興味深い。吉見の復活計画が成功すれば、それがスタンダードになっていく可能性も高いからだ。
 現在の中日は、選手の状態をしっかり考慮して無理をさせずに起用する体制になっているだけに、何が何でも今年の優勝に賭けて吉見を酷使することは考えにくい。
 とはいえ、リーグ優勝が手の届くところにきた場合、吉見の力が必要になってくることは確実なので、吉見に無理をさせずリーグ優勝を果たすことができるか注目しておきたい。理想は、可能な限り中10日で起用し、シーズン終了まで中10日を貫くことである。


2015年04月29日

 D得点は打点以上に評価すべき記録だ

 打撃の三冠王と言えば、首位打者・本塁打王・打点王である。ここに得点王は入っていない。
 その違いは、打撃に関係なく積み重ねが可能な記録であるからだろう。たとえば、四球やエラーで出塁して後の打者の本塁打や安打で本塁に還ってくることができる。併殺崩れで生き残って帰還したり、エラーで出塁して帰還することもある。
 代走で出塁して本塁に還ってくることだってある。
 場合によっては1塁に出塁してから2盗、3盗、本盗で帰還することも不可能ではない。
 それだけに、打撃以外の要素が大きい分、評価されにくくなっているのだ。

 とはいえ、打点王だって、満塁で本塁打を放つのとランナーなしで本塁打を放つのとでは4打点と1打点で、4倍の差がある。押し出し四球でも打点がつくし、内野ゴロでも打点がつくため、打撃以外の要素も大きい。
 つまり、打点は、前の2人か3人の打者の出来不出来に大きく左右されるタイトルである。だが、主力打者ともなれば、大抵は上位打者が作ったチャンスで打席回ってくるものであり、さほど大差があるわけではない。
 だから、大抵は、本塁打を量産する打者が打点王を獲得するのである。

 それに引き換え、得点王は、自らの打撃の他に、いかに多く出塁できるか、いかに前の塁へ進めるか、後に続く打者が自らを還してくれるかが重要となってくる。
 四球で出塁するための選球眼や粘りも必要であるし、ゴロで相手のエラーを誘発したり、内野安打を量産できる走力も必要であるし、出塁後にアウトにならない判断力も必要であるし、盗塁できる技術力・走力も必要である。
 こうした側面から見てみると、イチローと王貞治という2人の選手がいかに偉大であったかが見えてくる。

 イチローは、2015年4月25日のナショナルズ戦で日米通算1968得点として王貞治が持つ1967得点を抜いた。
 王貞治は言わずと知れたスラッガーで868本塁打を放っており、バット1本だけでそれだけの得点を稼いできた。
 しかし、イチローの本塁打数は、230本であり、いまだ4倍近い差がある。積極的に打つタイプだけに四球も少ない。それでありながら、1968得点を稼ぐことができたのは、内野安打を勝ち取り、盗塁や走塁によって帰還する技術力・走力が王貞治を大きくしのいでいたからである。王が通算2786安打なのに対し、イチローは、通算4122安打(2014年末現在)である。王が通算84盗塁なのに対し、イチローは、通算686盗塁(2014年末現在)である。

 ここまで異なる2人の打者が同じくらいの得点を稼いでいるということは非常に興味深い。そして、日本のプロ野球が生んだこの2人が得点という面で他の追随を許さないほど突出している。

 野球は、どちらのチームがより多く得点を奪えるかを競うスポーツであるだけに、得点という最も勝敗に直結する記録はもっと高く評価すべきではないだろうか。
 打撃力とともに選球眼や走塁技術も必要な記録だけに、タイトルとして扱ってほしいものである。





(2015年5月作成)

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