2015年3月のコラム

犬山 翔太
 
2015年03月07日

 @プロ野球界の至宝 岩瀬は焦らないでもらいたい

 中日のクローザー岩瀬仁紀が左肘の違和感で離脱して、開幕に間に合うかどうかが微妙な状況になってきた。
 15年連続50試合以上登板、16年連続30試合以上登板をしてきた日本プロ野球の至宝とさえ言える鉄腕も、2014年8月に左肘を故障して以降、実戦に復帰できていないのは気がかりである。

 岩瀬は、プロ野球界で最も故障に縁のない投手だった。おそらくは投げ方が肩や肘に大きな負担がかからないこと、フォークやスプリットのような肘に大きな負担のある変化球を投げなかったこと、球威で抑え込む剛速球投手でないこと、クローザーになってからは基本的に1イニング限定で大事に使われたことが800試合以上に登板しながら故障しなかった理由だろう。

 それでも、既に40歳を超えており、岩瀬も、永遠に投げ続けられるわけではない。未だ鎌のように曲がるスライダーは、魔球であってそれを完璧にとらえられることはないほどではあるが……。
 中日には、今年50歳になる山本昌がいるため、やろうと思えばあと10年という考え方もある。だが、それは、肩や肘に大きな故障がなければという条件がつく。

 岩瀬の今後を占うのは、今年、どれだけの成績を残せるかにかかっている。
 私は、昨年8月6日の広島戦で、岩瀬が故障降板した場面を見ていたが、素人目にはほとんど分からない岩瀬の異変を監督兼任捕手の谷繁が見抜いて、谷繁自ら降板を指示した。
 これにより、岩瀬の状態が深刻になることを防げたと見ているが、岩瀬は、これまで長期故障離脱の経験がないだけに、焦らずに完治させることができるかが気になるところである。

 現在、岩瀬の通算セーブ数は、402にのぼっており、もちろん前人未到である。現役で2位の記録が藤川球児の220セーブ(他に大リーグで2セーブ)、2位が馬原孝浩の180セーブであり、どう見てもあと10年くらいは近づく選手さえ出てこない大記録である。

 岩瀬には、通算登板数が889であり、米田哲也が樹立した日本記録949の更新への期待もかかる。
 通算500セーブとともに通算1000試合登板という記録を打ち立ててもらうことを期待しているが、そのためにもあせらず左肘が万全の状態になるよう調整を続けてもらいたい。

 幸い、リリーフ陣は、若手の福谷、又吉、浅尾、岡田、田島らが揃っており、かつての岩瀬頼みの状態ではなくなっている。
 岩瀬が無理をして投げる必要はないだけに、完璧な状態で戻ってきて、また当たり前のようにセーブを挙げる姿を見せてもらいたいものである



2015年03月22日

 A打席に投手の意図と、見えてきた先発ローテーション

 2015年3月21日、中日がDH制のあるオープン戦で投手を指名打者や代打で打席に立たせる策をとった。

 報道では谷繁監督の発案みたいな書かれ方となっているが、実を言うと中日では落合GMが監督時代に交流戦導入当初から行っていた策である。

 中日は、補強のために多額の資金を投入できないという制約上、限られた予算内で、勝利を追求していかなければならない。
 そのため、中日は、落合監督時代、様々な試行錯誤を繰り返しながら、資金力が豊富な巨人や阪神と対等以上の戦いを見せて、幾多の栄光を勝ち取ってきた。

 セリーグではDH制を採用していない以上、投手も9番目の打者として調整が必要である。
開幕一週間前ともなれば、レギュラーは、ほぼ固まっている。そうなれば、本番同様の打順構成で実戦を重ねるというのは、有効な手段だ。

 せっかくDH制を採用しているのだから野手を少しでも多く打席に立たせてチャンスを与えるべきだ、という意見もあるだろうが、それは、開幕一週間前までに済ませておくべきことである。朝倉や吉見よりも打席に立つ回数が少ないであろう控え選手がスタメンで調整する必要もないわけだ。朝倉も、吉見も、昨シーズンは途中離脱しており、実戦感覚のブランクが長いということも、打席にいち早く立たせた理由だろう。

 この起用によって、中日の先発ローテーションも見えてきた。山井、大野、吉見、バルデス、朝倉が先発ローテーションに入ってくる見込みである。残り1枠を八木、雄大、西川あたりが争う形になりそうだ。
 中日は、抑えの岩瀬が開幕に間に合わないものの、福谷が抑えを務め、中継ぎで又吉、浅尾、祖父江、高橋、田島ら豊富なだけに、先発ローテーションが安定すれば、強力な投手陣となる。あと1つの先発枠とともに、次はどの投手が打席に立つのかも注目しておきたい。



2015年03月28日

 B中日は低い下馬評を覆せるか

開幕戦は、創作者のデビュー作に似ている。
そのチームの構想や戦い方が見えてくるからだ。
阪神×中日戦は、両チームの特色が出た興味深い接戦となった。

阪神は、出塁率の高い鳥谷を1番に据え、西岡、ゴメス、マートンで返すというどっしりとした形をとった。ゴメスが昨年同様の成績を残せるかどうかが打線の大きなカギとなりそうである。
投手は、今年もメッセンジャーを大黒柱にしてローテーションを回し、いかにクローザー呉につなぐかという継投になる。メッセンジャー、藤浪、岩田、能見とエース級が4人いるだけに、故障者が出なければ、安定した成績が残せそうだ。
捕手は梅野が正捕手を務めるようであり、打撃とリードの両面が成長すれば、優勝争いをする可能性が高い。

中日の場合、大砲がいないため、足と小技の使える1、2番が出塁し、3番から7番までの中距離ヒッターでこつこつ得点を積み重ねる打線である。和田が戻ってくれば、しぶとい打線となるなので、荒木、エルナンデスの二遊間が1年を通して攻守に活躍できれば、安定した成績を期待できそうだ。
投手は、山井と大野を二本柱にしてローテーションを回し、岩瀬が戻ってくるまでは7回浅尾、8回又吉、9回福谷の抑えとなりそうだ。サイドスローに転向したばかりの田島はまだ1軍で安定した成績を残せる制球力がないことを露呈したため、代わりに岡田あたりが上がってくる可能性が高い。
中日は、先発投手が山井と大野以外、確定していない。今後、シーズン序盤でいろいろ試しながらローテーションを固めていくというやり方になる。何といっても復活すれば相当な勝ち星が見込める吉見の状態いかんで、大きく状況が変わってくる。
さらには、新戦力のバルデス、八木を先発ローテーションで回す予定であり、この未知数の戦力が成績を残せば、優勝争いに絡んでいくことができそうである。

今年は、阪神と中日が優勝争いを繰り広げてもおかしくない。阪神は、下馬評が高く、中日は下馬評が低いが、阪神にさしたる総合力の上積みが感じられないのに比べ、中日は、吉見、浅尾が故障からの復活、バルデス、八木が新戦力として先発ローテーションという相当な総合力の上積みが予想できる。

まだ始まったばかりであり、どのようなシーズンになるかまでは予測できないが、新体制2年目の中日が下馬評を覆してくれることに大いに期待が持てる。







(2015年4月作成)

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