2014年12月06日
@中島裕之の高額契約は妥当なのか
前回は、大島洋平の年俸7400万円が高いのか安いのか考えていたのだが、中島裕之の3年12億円という破格の高額契約を見ると、球団の資金力格差を痛感せずにはいられない。
「日本人野手は、アメリカへ行くと壊れて帰ってくる」
そんな話をよく聞かされる。
確かに一流選手として実績を残し、アメリカへ渡ったものの、数年で日本球界へ復帰。しかし、調子を崩しているという事例が多い。
中村紀、松井稼、岩村、福留、西岡、井口、城島といった選手の多くが渡米前よりも大きく成績を落としている。渡米前の2006年に打率.311、32本塁打の岩村が帰国直後の2011年に打率.183、0本塁打に終わったのには、本当に同じ選手なのかと疑ってしまうほどだった。
渡米前とさほど変わらない実績を残しているのは井口くらいと言っても過言ではないだろう。
とはいえ、多少調子を崩していたとしても、日本球界ではレギュラーとして起用されるという利点もあって、マイナーリーグでくすぶっているよりは、大リーグに上がれなくなった選手は、日本球界を選択して帰国というパターンが今後も増えるはずである。
中島裕之の場合、渡米後に故障してしまったこともあって、2年間のアメリカ生活で1度も大リーグに上がれない、という状況に陥ったが、オリックスが3年契約12億円という破格の契約を結んだ。
2014年のペナントレースではあと一歩のところで優勝を逃しただけに、この補強は、極めて大きな賭けに出た、という印象である。1996年以来のリーグ優勝達成に向けて、ここが投資のしどころという勝負師魂を感じる。
中島の2014年の成績は、2Aで73試合、打率.266、6本塁打。この成績を判断すれば、通常の外国人であれば、1年5000万円程度の契約が関の山となるだろう。にもかかわらず、1年あたり4億円という破格の年俸になったのは、やはり渡米前の中島の好成績を高く評価したのと、遊撃手で強打者という貴重な存在だからという理由が大きい。
オリックスは、このままエース金子が残留すれば2015年も優勝争いに加わる可能性が高いので、中島が活躍するならば、リーグ優勝が見えてくる。
渡米前の2012年に出した成績である打率.311、13本塁打、74打点にいかに近づけるかがオリックスの2015年の成績を大きく左右する。
遊撃手として規定打席に到達し、打率3割を達成してリーグ優勝することが、中島の高額契約を妥当と判断する最低条件になるだろう。
それにしても、オリックスは、思いきった補強をしたものである。
2014年12月13日
ABクラスの球団は外国人選手枠を1増やしてほしいという願望
契約更改も一部の選手を除いて一段落となり、あとは、移籍が濃厚とされる選手の動向と各球団の補強が焦点となってくる。
2014年のペナントレースは、大型補強を得意とするソフトバンクと巨人のリーグ優勝に終わったこともあって、面白いシーズンとは言い難かったが、そんな中で広島の健闘が光った年でもあった。
ここ2年4位に終わった中日は、2007年に韓国の大物選手李炳圭獲得を最後に、海外の大物選手の獲得をやめて、ドミニカ人選手を中心とした安価な外国人選手獲得の方針を貫いている。
2014年オフは、キューバ出身のバルデス投手、ドミニカ出身のナニタ外野手、リバス投手を獲得したとのことである。
いずれも大リーグではほとんど名を知られていない存在であり、年俸は公開されていないようだが安価な獲得と考えられる。
限られた予算内で補強をしていく場合、他球団でくすぶる選手をトレードで獲得する、育成選手を増やす、安価な外国人選手を獲得する、といった方法があるが、いずれも結果が出にくい。
中日も、これまで獲得してきた安価な外国人選手のうち、開花したと言えるのは、ブランコとネルソン、ルナくらいであり、獲得が成功するのは、そう高くない確率となる。
中日にとっては、ローテーションを任せられる先発投手、核となる四番打者が待望なだけに、そこを埋める選手の獲得が鍵となってくる。
バルデス投手とリバス投手には、1年間ローテーションを守れる先発として、ナニタ外野手には1年間四番を務められる打者としての活躍を望みたいところである。とはいえ、現状では既にルナとエルナンデスがいるため、外国人選手枠の関係が壁となってくる。
日本のプロ野球は、外国人選手枠があり、最大4人までという制限がかかる。獲得した外国人選手を全員起用することが困難な場合もあり、1軍で十分に活躍できる実力を持ちながら、外国人選手枠の関係で2軍の選手もいる。
年々、国際化が進む現在、プロ野球界も、そろそろ外国人選手枠の拡大を検討すべきである。
特にBクラスだった球団には翌年、外国人選手枠を1拡大するといった方策があれば、もっとペナントレースが面白くなるように感じる。
2014年12月14日
B調停はもっと手軽にできるべきではないか
中日大島の契約更改は、いまだ平行線のままである。大島が主張を曲げず、球団が提示額を変えない、ということが決まっているのであれば、早々に調停をすればよいのではないか、と考えてしまう。
しかし、調停は、さほど簡単にできるものではないらしく、調停に至るまでには何度も何度も交渉の機会を持って、妥協点を見い出す努力をしなければならないらしい。
そうして、契約交渉が長引くうちに、選手にとっては金に汚いというイメージがついていってしまって、世間からの評判を落としてしまうことになる。サラリーマンであれば、会社が決める給料に文句を言わず、地道に働き続けるのが一般的である。それだけに、こうして個人で年俸を交渉できる選手は、特別な存在であり、個人主義者として見られてしまうデメリットがある。調停を行った選手のその後の扱いが芳しくないだけに、マイナスイメージがつきすぎてしまっているのも問題だ。
個人的には2回の交渉で契約更改がまとまらなければ自動的に年俸調停にかかるような仕組みが望ましいと思う。
いつまでも平行線のまま、だらだらと交渉を続けるよりは、一気に第三者が妥当な額として金額を出してしまった方がいい。
調停委員会には、弁護士もいるとのことであり、選手と球団の主張がかけ離れてまとまらない場合は、早期に調停での決着を図った方が効率的である。
特に、選手にとっては、調停をしても上がらないかもしれない年俸のことに時間と労力をとられて、本業の野球がおろそかになってしまうことは、できる限り避けるべきである。
2014年12月20日
C1回目の提示額を一貫して変えない中日の姿勢を評価
大島洋平選手が3回目の契約更改交渉でサインした。
金額は、1回目に球団が提示した1775万円増の7400万円のままである。
大島は、計3回の交渉で球団が提示額を引き上げてくれるのを期待していただろうが、球団は、一貫して提示額を変えなかった。
これまで、中心選手や活躍した選手の場合、選手が主張材料を持ち込んで、年俸アップを交渉すれば、それが希望額に届かないまでも、引き上げられるということがよくあった。
プロ野球選手の年俸は、今シーズンに残した結果から導き出されるものであると同時に、翌年の期待料も含めた翌年分の給料である。ゆえに、翌年に対する意欲を持ち、さらに成績を伸ばす期待が高い選手に対しては、選手の意気込みに応えて引き上げるということが可能なのだ。
しかし、中日は、落合GMを中心とする球団方針として、初回の年俸額を一切変更しないという姿勢をとった。
昨年も、一昨年の2位から限りなく最下位に近い4位に沈んだこともあって厳冬更改となったが、保留者がいなかったため、全員が初回の年俸額で契約更改を終えている。
今年は、大島と平田が保留したものの、いずれも初回の提示額そのままでサインを行ったため、中日は、2年連続で球団の提示額を一貫して変えなかったことになる。
この決断は、大島の件で世間に批判が巻き起こったように、球団としては勇気のいる姿勢である。
それでも、球団が初回の提示額にこだわったのは、確固とした基準によって全選手を平等に評価しているという事実を崩したくなかったからだろう。
川上投手が6試合登板にもかかわらず、年俸がアップしたことに疑問を抱く者が多いようだが、それは、川上が明かしているように、最初から2年契約だったためであり、2年総額7000万円という契約はおそらく1年目に決まっていただろうから仕方がない。
球団が仮に大島選手のために、2回目の契約更改交渉以降に年俸額を引き上げれば、前提となっている基準が基準でなくなってしまい、不平等を招くことになる。
それを防ぎ、保留した選手以外の1発更改した選手を守るためには、球団は、何度交渉しようとも、1回目の提示額を変更するわけにはいかないのだ。
落合GMと球団は、そんな一貫した姿勢によって、1発更改をした大多数の選手たちを守った。落合GMは、監督時代からそういった平等な目を持って、選手たちを守り続けている。
それなのに、マスコミが大島と球団の確執に祭り上げて煽り立てるため、本質を見逃してしまっているのが残念である。
2014年12月26日
D岩村明憲に見る大リーグのラフプレーの代償
岩村明憲がヤクルトを戦力外となって退団し、2015年は独立リーグの福島ホープスで選手兼任監督を務めることになった。
岩村は、近年の不振により、かつてヤクルトと大リーグで活躍を見せていた姿を世間からはすっかり忘れられてしまっている感もあるが、2009年までは日本を代表する内野手だった。
2004年には打率.300、44本塁打、103打点の好成績を残したほか、大リーグに渡る前年の2006年には打率.311、32本塁打、77打点を残すスラッガーだった。
大リーグでも2007年にはレギュラーとして打率.285、7本塁打、34打点の活躍を見せ、翌2008年には172安打を放った。
2009年のWBCでは日本代表のレギュラーとして世界一に貢献し、順風満帆だった。
しかし、事態が暗転したのは、2009年5月24日の負傷だろう。二塁の守備で一塁走者のスライディングを受けて左ひざ前十字靭帯の部分断裂という大きな故障をしてしまい、岩村は、その後、故障前の打撃を取り戻せずに苦闘することになる。
大リーグでは、果敢なスライディングをする選手が多く、西岡剛もその被害に遭って大リーグでは活躍することができなかったが、日本人内野手が大リーグで活躍を長期間にわたってできないのは、グラウンドの状態や過酷な移動よりも、守備での走者との接触プレーがあまりにも過酷だからだろう。
岩村は、現在のところ、日米通算1585安打にとどまっているが、仮に日本球界でずっとプレーを続けていれば、現在2000本安打を達成していてもおかしくないほどの名選手だった。
1つの故障がここまで大きく選手の命運を変えてしまうというのは、スポーツにはよくあることだが、岩村選手が仮に大リーグ移籍しなければ、または大リーグで大きな故障に巻き込まれなけば、と考えてしまう。
これから内野手として大リーグに渡る場合、日本人選手に対するラフプレーには、大きな覚悟を持って海を渡らなければならない。そういった大リーグでの激しいプレーを念頭に置いておかなければならない。選手生命を左右する故障に巻き込まれているリスクを回避するために、充分な検討と準備が必要である。
2014年12月27日
E日本人選手が目指すべき選手は黒田博樹だ
とんでもないニュースが飛び込んできた。ニュースを見て鳥肌が立ったのは久しぶりである。
今、黒田博樹が広島に復帰するなんて、まだ1%も想定していなかったからだ。
その衝撃は、1995年に野茂英雄がマイナー契約から這い上がり、大リーグで最多奪三振と新人王に輝いたとき以来だ。
黒田は、2014年まで大リーグで5年連続2桁勝利中だ。現在の年俸は、約19億円で、この年のオフには大リーグで争奪戦が起こり、最大で約21億円の年俸が提示されている。
通常であれば、黒田が年俸4億円程度を提示する広島に戻ることはありえない話だった。
私は、黒田が大リーグでバリバリ活躍している状態で広島へ戻る願望を持っていることは知っていた。そのために、黒田が大リーグとは単年契約を貫いていることも知っていた。だが、それは、自らを育ててくれた広島に対する最大限のリップサービスだとも思っていた。
しかし、今、それがリップサービスでなかったことが明らかになった。大リーグの争奪戦をあざ笑うかのように広島復帰を決めたのは、もはや爽快ですらある。
広島にとっては、戻ってくるタイミングが絶妙でもある。前田健太が残留を決め、かつての四番打者新井貴浩が広島に復帰した。エルドレッドという強力な四番がいて、丸、菊池、田中、大瀬良、中田、一岡といった若手選手も台頭してきた。
戦力としては、充分にリーグ優勝を狙える体制が整ったと言っていいだろう。
黒田、前田、大瀬良が順調に調整できれば、シーズン序盤から広島が抜け出す可能性も秘めている。
それにしても、常識的にはありえないことが起きた。黒田の心の中には、お金には換えられないほど大きな恩義というものが存在するのだ。
黒田のおかげで、日本球界で契約更改を保留する選手がやけにちっぽけに見えてしまう。黒田のような大きな選手になるのは容易ではないが、今の日本球界の選手たちも、黒田を目指してほしいものである。
私には、かつて渡米する前に広島で活躍していた黒田へのコメントで未だに忘れられないものがある。
黒田が2006年7月2日の中日戦で、当時最強を誇っていた打線を3安打完封した試合後、落合監督がインタビューで発したものだ。
「今日の黒田は、俺が現役のときでも打てない。だから、うちの選手が打てるわけがない」
2014年12月28日
F球場を広くしてスラッガーを育てるか、球場を狭くしてファンを増やすか
ヤフオクドームがラッキーゾーンを設置する予定だという。左中間と右中間は最大5メートルも狭くなる。
現在、大リーグで活躍できる日本人スラッガーが育たない、という日本球界が抱える難題を克服しなければならないのに、まさか逆行するように球場を狭くすることが実現するとは予想していなかった。
あまり賛同できないな、というのが正直なところである。
確かにヤフオクドームは、球場が広い上に外野フェンスが高いため、本塁打が出にくい球場である。
球団としては本塁打を増やして、打撃戦になる方が試合を面白くできるし、観客も熱狂する。
その気持ちは、分からないではないが、狭い球場で何とか外野フェンスを超える技術を身に着けてしまうと、大きな球場で本塁打を打てなくなる。
大リーグでは松井秀喜が最高31本塁打を放ったシーズンがあったものの、他の日本人大リーガーは、シーズン20本塁打以上放った選手すらいない。松井秀喜も、東京ドームではなく、もっと広い球場を本拠地にしていれば、大リーグで本塁打王を争えたのではないかという想いもある。
日本人は、大リーグではイチローや青木のように走好守揃った選手として安打を量産することで存在価値を見い出せばよいという考え方もあるだろうが、ファンとしては、やはり大リーグで本塁打王争いをしてくれるような日本人選手が出てくることを期待してしまう。
大リーグで本塁打を量産できる選手を日本球界が育てていくためには、日本でも広い球場を多くして、飛距離を稼がないと本塁打にならないようにしなければならない。
簡単に本塁打が出ることで試合を面白くして、観客増やファン拡大を図りたい、という考えには逆行することになる。
球場を広くして本物のスラッガーを育てるのか、球場を狭くしてファンを増やすのか。
その選択は、なかなか両立させることが難しい。ソフトバンクは、後者を選んだということだ。利益を追求しなければならない民間企業として、これが最善の方策という決断なのだろう。
ソフトバンクは、アマチュア選手の受け皿として大量の育成選手を保有して、選手育成にも熱心なだけに、この決断には少し残念さを感じずにはいられない。
2014年12月29日
G今は戦前の記憶を発掘できる最後の時代だ
私は、今から10年ほど前、近隣の街にある古本屋をめぐって、戦前戦後を含む過去のプロ野球に関する本を買い集めていたことがある。
インターネットが急速に普及していたため、近い将来、本や雑誌がなくなってしまい、古本屋もなくなって、過去の資料がどこからも手に入らない時代が来るだろうと想定したからだ。
実際は、さほど書籍が急激に電子化されることもなく、本や雑誌はいまだ健在ではあるが、店をたたむ書店は増え、多くの新刊が電子書籍購入で済む時代になってきたことは否めない。
10年前にはまだ私は、バンクーバー朝日の存在を知らず、それを取り上げた書籍も見かけなかった。私がバンクーバー朝日の存在を知ったのは、今年に入ってからである。カナダのバンクーバーで結成された日系人の野球チーム「バンクーバー朝日」が創設100周年ということで、映画化もされた。
当時の状況から見ると、こうやって彼らの足跡が発掘されるのは、奇跡的でもある。
そういう経緯もあって、2014年12月公開となった映画『バンクーバーの朝日』を観てきたわけだが、重点を置いていたのは、当時の日系人の置かれた厳しい環境とそれを克服しようとがむしゃらに頑張る日系人の生活だった。そこに、バンクーバー朝日が日系人たちの唯一の希望となって輝きを放っていたのだ。
バンクーバー朝日は、カナダ最高リーグで最強を誇ったものの、第二次世界大戦開戦によってバンクーバー朝日は、解散を余儀なくされる。今、この映画が公開されたことで、集団的自衛権を認め、憲法九条を変えようとするなど、欧米の傘の下で欧米化を進める日本への警鐘がこもっているように見えてくる。事実上、自民党の一党独裁を選択してしまった国民が今こそ、見つめ直すべき歴史が描かれている。
映画になってしまうと、どうもそういった政治的なメッセージ色が見え隠れしてしまうのだが、私としては、「バンクーバー朝日」という最強の日系人野球チームをこうして世間に知らしめてくれた効果の大きさを評価したい。
第二次世界大戦が終わって70年が経とうとしている今、戦前の野球を経験したり、観たりした人々も、少なくなっている。あと10年、20年もすれば、記憶の中に残っている人はほとんどいなくなる。もはや、記録と伝説の中だけでしか語れなくなってしまうのである。
そうであるがゆえに、今は、戦前の野球を記憶と共に発掘できる最後の時代である。可能な限り、知られざる過去を発掘し、記録としてネット上や映画、書籍として残していってほしいものである。
2014年12月30日
H金子千尋の選択はローリスクミドルリターンの見本
黒田のニュースに主役を奪われてしまった感があるが、金子千尋がオリックスに4年契約20億円で残留を決めた。
日本球界ではナンバー1の実力を持っていると言っても過言ではない投手のため、国内他球団で1年やって大リーグへ移籍するとなると、また日本のプロ野球が空洞化してしまう懸念があったが、これで一安心である。
来年からも、ソフトバンクとオリックスがしのぎを削るペナントレースが見られそうである。
金子がオリックスと4年契約を結んだということは、金子は、事実上日本球界でずっとやっていくと宣言したようなものだ。
35歳のシーズンを終えて36歳のシーズンを迎えようとするときに、大リーグからオファーがあるかどうかといえば、その可能性は低く、仮にあったとしても3、4年しか大リーグでプレーできない。
オリックス一筋で、かつての山田久志のような通算記録を打ち立ててほしいものである。
日本の超一流投手が大リーグ移籍をしてきたイメージが強いが、実際は、大リーグ移籍に興味を示さなかった投手も多い。
たとえば、2014年に前人未到の通算400セーブを達成した岩瀬仁紀や最年長勝利投手記録を更新した山本昌は、大リーグ移籍に全く興味を示さず、中日一筋を貫いている。また、長らく西武のエースを務めた西口文也や横浜DeNAの三浦大輔も、大リーグ移籍に興味を示していない。
野茂英雄や黒田博樹のように大リーグでも安定した成績を長年残せれば、大リーグ移籍するメリットはあるかもしれないが、多くの選手が大リーグ移籍によって故障したり、評価を落としたりしてしまい、通算記録が伸び悩んでいる以上、大リーグに移籍しないという選択は、賢明でもある。
特に金子は、右肘に不安を抱えており、大リーグ移籍した投手のほとんどが肘を故障して苦しんでいるだけに、日本球界に残る方が無難な選択となる。
近年は、大リーグ移籍が国内の他球団への移籍と同等程度にしか見られなくなってきて時代の変化を感じるが、それでも大リーグ移籍が国内移籍に比べて、圧倒的にハイリスクハイリターンであることは間違いない。
国内移籍も、環境が変わることと対戦相手が変わるということはかなりの負担となり、ミドルリスクミドルリターンという印象が強い。FA移籍した選手の多くがおそらくは移籍しない場合よりも不遇の晩年を送っているようにも感じられる。
それらを考えれば、国内FA宣言をしながら4年20億円でのオリックス残留を決めた金子は、ローリスクミドルリターンという、おそらくは最善の選択をしたと言わざるを得ない。
金子の国内FA宣言をして残留で複数年契約という方法は、今後、ローリスクの選択肢として多用されるような気がしてならない。
2014年12月31日
I2014年 私的プロ野球ニュース10選
2014年のプロ野球は、振り返ってみると、セパ両リーグともに盛り上がり、大リーグでも日本人選手が盛り上げてくれた。
私の記憶に残ったプロ野球の出来事をよく見かけるような10項目に絞り込んでみると、下記のようなものとなる。
特に、順位付けをするつもりはなかったのだが、衝撃の大きかったものから書いていくと、順位のようになってしまった。
今年話題になった出来事の多くは、来年に向けて続いていくような出来事が多かったため、引き続き注目していくべきであるという点においても重要である。今年を振り返れば、来年の展望が見えてくるというのは、いい出来事が多かったと言い換えることもできるだろう。
この出来事が入っていないのか、という意見は、多々あるだろうが、あくまで私の感覚のみで選んだものなので、軽く読み流していただきたい。
1.黒田博樹 大リーグの年俸21億を蹴って年俸4億の広島に復帰
年末に飛び込んできたこのニュースは、常識的にはありえない話であるだけに、日本だけでなく、アメリカにも大きな衝撃を与えた。
パドレスは、年俸約21億円を提示して獲得に動いていたと言われ、約4億円でオファーを出した古巣広島の誠実な交渉が実った形となった。
黒田は、無名のアマチュア時代から目をかけてもらい、ルーキー時代から地道に育て上げてくれた広島に大きな恩義を感じており、最後は広島でという希望を有言実行したのである。こういう男気溢れる選手がまた出現してくれることを願いたい。
2.山本昌 史上最年長勝利投手記録更新
どんな一流プレーヤーでも、40歳くらいには成績を落として限界を感じ、引退を念頭に置くものだが、山本昌は、40歳を過ぎても、ローテーション投手として活躍し、49歳になった今季も、先発投手として1軍のマウンドに上がり、2014年9月5日の阪神戦では5回無失点で勝利投手になるという快挙を成し遂げた。49歳0か月での勝利投手は、もちろん史上最年長である。
今年は、「レジェンド」という言葉が流行したが、その1番手は間違いなく山本昌だろう。
来年は、もはやマウンドに上がるたびに、前人未到の成績を更新していくことになる。
3.岩瀬仁紀 前人未到の通算400セーブ達成
2014年7月26日、岩瀬は、巨人戦で7−4の9回に登板し、1点を失ったものの、セーブを挙げて前人未到となる通算400セーブを達成した。
この記録は、毎年30セーブを挙げていても14年かかってしまう記録なので、どれだけすさまじい記録かが想像できる。
しかも、岩瀬は、いまだ中日のクローザーであり、今後もこの記録を伸ばすとともに、通算1000試合登板というこれまで前人未到の記録にも近づいている。通算1000試合登板と通算500セーブを達成するところまで、現役を続けてほしいものである。
4.ソフトバンク 10.2決戦でオリックスを破ってリーグ優勝
シーズン最終戦でリーグ優勝を決めるというのは、毎年あるわけではなく、その試合が1点差を争う好ゲームになるということもそうあるわけではない。
ソフトバンクとオリックスの最終決戦10.2は、見ごたえのある展開になったと同時に、ソフトバンクの先発大隣が黄色靭帯骨化症という難病から復活しての登板だったことや、サヨナラで試合を決めたのが勝負強さやムードメーカーとして定評のある松田だったことも、感動を増幅させてくれた。
その勢いでクライマックスシリーズと日本シリーズも制したが、やはり10.2の記憶は絶大である。
来年も、松坂が加わった最強ソフトバンクと大型補強で久しぶりのリーグ優勝を狙うオリックスの激闘が見られそうである。
5.大谷翔平 シーズン10勝10本塁打を達成
大谷がデビューした昨年には、二刀流なんてやめるべきだ、と言っていた人々も、だんだんとおとなしくなってきた。
投手としてシーズン11勝4敗という一流投手の成績を残しながら、打者としてもシーズン10本塁打、打率.274を記録する非凡さを見せつけられては、片方だけに絞るというのももったいなく感じてしまう。10勝10本塁打以上はもちろんプロ野球史上初、世界でもベーブ・ルース以来という快挙である。
次は、シーズン15勝とシーズン20本塁打を同時に達成できたとしたら、世界中のプロ野球界で永久に破られない記録になるであろうから、ぜひとも達成してもらいたいものである。
6.田中将大 大リーグで6月までに2桁勝利も故障離脱
大リーグでも田中将大の勝つ力は、本物だった。シーズン序盤から開幕6連勝を飾ったときは、大リーグでも連勝記録を作ってしまうのではないかと思ったものだが、現実はそんなに甘くなかった。
それでも6月17日時点で11勝1敗となったところまでは、まさに大リーグでも怪物級の成績で、20勝はいくのではないかとさえ想像した。その後、右肘の故障によって離脱してしまったのが残念ではあるが、シーズンを通してローテーションで投げれば、日本人初のシーズン20勝をきっと達成してくれることだろう。
7.大谷翔平 日本最速タイ記録の162キロ
2014年10月5日、札幌ドームでの楽天戦で初回に銀次選手への2球目で公式戦最速タイ記録の162キロを計測すると、その後も162キロを叩き出し、計4度にわたって162キロを投げた。
162キロの記録を持っていたのは、外国人投手のクルーンで、日本人投手がこの記録に並ぶのは困難と思っていただけに、大谷の身体能力の高さには驚愕の言葉しかない。
これでまだ20歳というところが、来年の最速記録更新に大きな期待が持てる。故障はしないよう、球速だけにこだわって無理はしないでもらいたい。
8.カープ女子が流行語に
今年は、シーズンを通してカープ女子という言葉がメディアを席巻した。関東からのマツダドーム観戦ツアーもあったりして、取り上げるたびに女性ファンが増えていくという相乗効果もあって、マツダスタジアムが女性ファンで真っ赤に染まるという現象が起きた。
肝心のカープも、若手選手の台頭で力をつけ、2年連続3位となってクライマックスシリーズに進出。エース前田が残留し、現役大リーガー黒田が復帰する来年は、優勝候補に上がりそうな気配である。
9.プロ野球16球団構想
自民党の日本経済再生本部が日本再生ビジョンとして組み込んだ構想。二宮清純氏が提唱し、アベノミクスの一つの政策として発展する可能性を秘めているため、大きな話題となった。
静岡、北信越、四国、沖縄といったプロ野球球団の本拠地がない地域に球団を創設して、市場の拡大と地域の活性化を目的としている。しかし、赤字を覚悟しなければならない球団経営の費用が懸案でもあるため、16球団化には賛否両論があって、具体化はまだ時間がかかりそうである。
10.阪神 巨人に圧巻のCS4連勝
巨人ファンにとっては悪夢、アンチ巨人ファンにとっては、痛快な出来事であったにちがいない。
点差は、すべて4点差以内だっただけに阪神の圧勝というわけでもなかったが、安定した戦いぶりで、巨人の本拠地東京ドームであるにもかかわらず、あっさり4連勝したことは価値がある。
一方、4連敗したにもかかわらず、巨人からCS廃止やルール変更の意見が前面に出てこないのは、セリーグ三連覇を達成した余裕なのだろうか。
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