プロ野球1シーズン140試合制導入

 1 対立の果てに


 プロ野球オーナー会議で決定した2001年シーズンからの140試合制をめぐっては、当初から経営側と労組の間の対立が見られた。

 ことの発端は、2000年4月にセリーグがプロ野球振興特別委員会で140試合制を提案したことに始まっている。
 これは、1997年130試合から135試合に増加させたのに続いて、2001年から地方球場での試合を増やすために140試合にするというもの。135試合制はわずか4年で終わりを告げることとなった。135試合制では相手チームとの対戦が1試合増えて27試合となり、普通に行けば対戦成績で決着がつく形になっていたが、140試合制になると28試合となり、14勝14敗の成績が生まれやすくなる。
 当初、パリーグは付加価値が乏しいことを理由に反対していたが、セ・パで再検討の結果、2000年7月にプロ野球のオーナー会議では満場一致で実施を決定。
 労組の選手会は、この決定に選手の負担が多大なものになってしまうことを理由に反発。以下の5項目の要求とセ・パ交流試合の提案をする運びとなった。

 @試合増に伴う年棒増
 Aオールスター1試合制
 Bセリーグ延長15回再試合を廃止し、12回引き分け制の導入(決定済)
 C地方球場の施設改善
 D連戦の緩和

 12月にはプロ野球選手会の古田敦也会長がセ・パの交流試合を含む142試合制を提唱した。さらに、上記の5項目が認められない場合は135試合から増えた5試合のうち1試合にストライキを強行することも選手会で決定した。
 これにより、経営側と労組の間に対立が避けられない状況になるかに見えた。
 しかし、こういった選手側が権利を主張してストライキを行うことは、欧米では頻繁に見られるものの、縦割り型の日本においては、これまで行われたことはない。
 今回の選手会側の要求も、経営側の強権に抑えつけられてストもできないまま押しきられる、という今まで通りの結果に終わった。旧態依然としたジャパニーズスタイルをそのまま踏襲した形である。
 だが、経営側の一方的な決定に対して選手会が闘争の形を一時的にせよ見せたところは、今後の日本のグローバル化への1歩となるかもしれない。


2 140試合制によって

 2001年からセパ両リーグが140試合制となったことで、観客動員数の増加が当初は見込まれていたが、実際、巨人に対する戦力の一極集中により、興味をなくしたファンが増加し、テレビ視聴率は大きく落ち込んだ。
 それに加えて、大リーグではイチローと新庄剛志というタイプの違う大スターが打者として初めて大リーグに移籍し、開幕から日本にいたときと変わらぬ大活躍を見せている。
 さらに1995年に突如大リーグ挑戦をして成功し、ここ2、3年は故障の影響でやや低迷していた野茂英雄が鮮やかに復活し、開幕初先発でいきなりノーヒットノーラン。2000年から大リーグで活躍し、昨年新人王となった佐々木主浩も前年を上回る成績を残している。

 人々の興味は、大リーグへ流れた。イチローと佐々木がいるマリナーズは、首位を独走。オーナーが任天堂であることも幸いし、日本の国自体のホームチームになったかのような勢いを感じさせる。日本人すべてがマリナーズを応援する、という現象になってきているのだ。
 しかし、日本のプロ野球の観客動員数は、それほど減っていない。大リーグ人気のおかげで、日本の野球人気も衰えを見せていないのである。

 そして、140試合制になったことにより、意外なところから新たな興味が生まれてきてもいるのだ。
 シーズン最多本塁打数更新への期待である。
 これまでのシーズン最多本塁打数日本記録は、1964年に王貞治が打ち立てた55本。が、これがシーズン140試合制で達成された記録であることを知る人は少ないだろう。
 1963年から1965年までセリーグはシーズン140試合制を導入していた。パリーグにいたっては1963年・1964年は何と150試合制で行われていたのだ。
 130試合制ではランディ・バースが1985年に作った54本という記録が最多である。140試合あった場合を想定して換算すると58本となる。
 
 2001年のパリーグでは西武のカブレラをはじめとして、近鉄の中村紀洋・ローズ、ダイエーの小久保裕紀などが55本の記録を超える勢いで本塁打を量産し続けている。
 カブレラに関しては5月末時点までの調子で、このままシーズン終了後まで活躍すれば、70本塁打を超える大記録の達成が見込まれる。
 そうなれば、130試合時点で54本を超え、140試合目までには55本を超えて正真正銘のシーズン本塁打最多記録が生まれるだろう。
 それがセリーグではなく、パリーグから生まれるそうなところに、野球の醍醐味があるのかもしれない。
 


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